TOPへ戻る
Studio sus4 (スタジオサスフォー) 西武池袋線 東久留米駅 徒歩2分
レコーディング編 ミキシング編その1 ミキシング編その2 ミキシング編その3
1.はじめに
1-1.サンプル曲「時はウラハラ」 2-6.コーラスの録音 3-6.ベース
1-2.特別な機材は使わない 2-7.レコーディングで良くある質問 3-7.エレキギター
3-8.アコースティックギター、キーボード
2.レコーディング編 3.ミキシング編 3-9.ボーカル
2-1.ドラムの録音 3-1.素材とプラグイン 3-10.コーラス
2-2.エレキベースの録音 3-2.完成状態 3-11.ボリュームのオートメーション処理
2-3.エレキギターの録音 3-3.マスターセクション 3-12.全体のバランスを考える
2-4.アコースティックギターの録音 3-4.ドラム 3-13.ミキシングでよくある質問
2-5.ボーカルの録音 3-5.タンバリン

3−7.エレキギター
▲目次へ
エレキギターはバッキングとソロに分けて説明したいと思います。
ギターや歌などのいわゆる「上物」は、リズムセクションの上に載せて聴いてみないと音の感じが分かりにくく、「単体で聴くと良いけど曲に混ぜるとイマイチ」という問題が起こりやすいです。以降の解説では楽器単体に加えて、他楽器と混ぜた音も掲載していきます。
バッキング
ギター1、2、3はPANとリバーブ以外は全く同設定ですので、「バッキング」という一括りにして説明したいと思います。
まずはリズム合わせて調整前後のギターの音を比較してみましょう。
バッキング
調整前
>>>
バッキング
調整後
録ったままの音でも悪くはないのですが、もう少し派手な感じが欲しかったのでエフェクトで調整しました。調整後は音色の基本キャラクターは変わっていませんが、微妙に音が明るい感じに変わったのが分かるでしょうか?0:08〜のBメロ・サビを聴き比べると違いが分かりやすいと思います。ギター単体の音も聴いてみましょう。 
バッキング
調整前(単体)
>>>
バッキング
調整後(単体)
単体で聴くと違いが分かりやすいですね。調整後はザラついた成分が増えて音が明るく派手に(悪く言えばノイジー)になり、リバーブで残響が加えられています。
バッキングギターは3トラックともインサートエフェクトは全くの同設定で mda Overdrive >>IIEQalt の順でインサートしており、最後にリバーブを掛けています。
詳しく設定を見てみましょう。
リバーブ
-23dB
リバーブ
-23dB
リバーブ
-13dB
mda Overdrive設定】
1段目のmda Overdriveは、原音をごく薄く歪ませて倍音を付加して、音の明るさをアップさせる目的で使用しています。
Drive 2%
Muffle(高域フィルター) 5%
Output 0.0dB
Driveで非常に薄く歪ませて、さらにノイジーな成分が出過ぎないようにMuffleで音質を微調整しています。処理前後の音を比較してみましょう。
DRIVE
調整前(単体)
DRIVE
処理後(単体)
原音に無かった倍音成分が薄っすらと加わり、音が調整前より明るくなりました。微調整程度の処理なので、違いが分かりにくいかも知れません。
試しに3トラック全て極端にDriveを上げた音を聴いてみましょう。
極端に
DRIVE(単体)
どうでしょう? これはやり過ぎですが、「歪みを加えると音が明るくなる」という事が分かると思います。
「原音に歪みを加える」というとエレキギターのディストーションサウンドをイメージされるかと思いますが、「歪みを加えて原音に無かった成分を発生させる」というのは、「音を明るくする」「音の抜けを良くする」「音に温かみを加える」などの効果があり、ギターに限らず色々なパートで良く行う処理方法です。もちろんこの時、ディストーションギターの様に深く歪ませる事はせず、ごく浅い歪みを加えます。基本的な音色は変わりませんので、「何か一味足りない」という時に大変おすすめの方法です。

ミキシング時にチューブシミュレーター等のプラグインを使用する以外にも、アウトボードに通したり、録音時のマイクプリアンプでも歪みを加えて音の感じを変える事ができます。古いアナログ機材は通すだけで良い感じの歪みが加わる物もあり、現在でも重用されています。
【IIEQalt設定】
IIEQaltは高域の微調整に使用しています。EQ処理前(DRIVE処理後)とEQ処理後を比較してみましょう。
EQ
処理前
(単体)
歪みが加わって明るさが増していますが、ノイズっぽさを増やさずにもう少しだけ高域が欲しかったので次の様にEQしました。
センター周波数 EQタイプ Q ゲイン
12012Hz ピーキング 0.10 +1.8dB
12kHz周辺を緩いQでブーストすることにより高域を少しだけ強調しています。
EQ
処理後
(単体)
音の明瞭度が更にアップしました。これも微妙な調整なので効果が分かりにくいでしょうか?
試しに極端にブーストした音を聴いてみて効果を確認してみましょう。
12kHz極端に
ブースト(単体)
非常に明るい音になりますね。これはオーバーにやり過ぎて中低域の重さが無くなっています。実際は中低域に影響が無い程度でブーストします。それでは、リズムに合わせてDRIVE+EQ処理した音と処理前の音をあらためて比較してみましょう。
調整前
DRIVE+EQ
処理後
ここまでの処理でだいぶ明るく抜けの良い音になっている事が分かりますね。

「DRIVE処理しなくてもEQ処理だけで音を明るく出来るんじゃないの?」と疑問に思われるかもしれませんが、このDRVE-EQの2段掛けには、「DRIVEで高域成分を作り出してEQの効きをより良くする」という意味があります。
元々高域不足で録れてしまった音をいくらEQで高域ブーストしてもそれ程の効果は得られません。こういう場合、DRIVEで原音に無かった高次倍音を作り出すことでEQの高域ブーストが効果的に効く様になるのです。
【リバーブ設定】
ギター1と2は周りとなじませる程度でセンド量-23dB、ギター3は深めの残響が欲しいのでセンド量-13dBにしてあります。
リバーブ処理後
【PAN設定】
ギター1と2は左右対称でL90/R90にして均等な広がり感にしてします。ギター3はギター1,2を避けてセンターに定位させています。
同じ役割のパートが2トラックある場合は、定位を左右対称にすると音像の偏りがなく自然な広がり感が得られるのでおすすめです。
【ボリューム設定】
ギター1と2は、基本的に左右均等なボリュームに設定してありますが、曲のに合わせて要所でオートメーションでボリュームを変化させて聴きやすいバランスにしています。ギター3はボリューム一定です。
※オートメーションについては後述します
ソロ
2番Bメロのオブリと終盤のギターソロのトラックは、PANとリバーブ以外は全くの同設定ですので、「ソロ」という一括りにして説明したいと思います。
終盤のギターソロをサンプルとして、まずはリズムに合わせて調整前後のギターの音を比較してみましょう。
ソロ
調整前
>>>
ソロ
調整後
調整前の音は少しバッキングに埋もれている印象があったので、これを改善するために調整しました。調整前後で音色の基本キャラクターは変わっていませんが、調整後は音が明るくなって前に出てきた感じに変わったのが分かるでしょうか?ギター単体の音も聴いてみましょう。 
ソロ
調整前(単体)
>>>
ソロ
調整後(単体)
ギター単体で聴くと調整後はかなり歪みが加わっている事が分かりますね。
バッキングと同様に mda Overdrive で歪みを加えた後に IIEQalt で高域の微調整を行い、最後にリバーブで残響を加えています。設定を詳しく見てみましょう。 
リバーブ
-23dB
リバーブ
-16dB
mda Overdrive設定】
1段目のmda Overdriveではバッキングよりも強く歪ませています。これはバッキングに埋もれない様に音を前に出す狙いです。
Drive 9%
Muffle(高域フィルター) 11%
Output 0.0dB
【IIEQalt設定】
IIEQaltは高域の微調整に使用しています。設定はバッキングと全く同じです。
センター周波数 EQタイプ Q ゲイン
12012Hz ピーキング 0.10 +1.8dB
それでは、DRIVE+EQ処理した音と処理前の音を、リズムに合わせてあらためて比較してみましょう。
調整前
DRIVE+EQ
処理後
DRIVE+EQ処理後は音が前に浮き出ている感じになっていますね。
【リバーブ設定】
2番Bメロのオブリはセンド量-16dB、終盤のギターソロはセンド量-23dBにしてあります。この値はお好みで問題ありません。
リバーブ
処理後
【PAN設定】
2番Bメロのオブリはセンター定位のボーカルとぶつからない様にL60に定位させています。ギターソロはセンターに定位させて、一番目立つ様にしています。
主役はセンターにして脇役はセンターを避けた定位にすると、音がバッティングしないので双方がよく聴こえる様になります。
【ボリューム設定】
2トラックともバッキングに埋もれない程度の音量に設定してあります。ボリュームオートメーションは使用していません。


3−8.アコースティックギター、キーボード
▲目次へ
曲のエンディングに登場する、アコースティックギターとキーボードはリバーブ処理以外はノーエフェクトです。
アコースティックギターはマイク/ラインのトラックを左右にPANを振って広がりを出しています。
アコースティックギター
調整前
>>>
アコースティックギター
調整後
キーボード調整前
>>>
キーボード調整後
アコースティックギター キーボード
リバーブ
-18dB
リバーブ
-18dB
【リバーブ設定】
アコースティックギターはセンド量-18dBで自然な残響を加えています。
キーボードはより広がり感を出すために、センド量-11dBで比較的多めの残響を加えています。
【PAN設定】
アコギはマイク/ラインを左右対称でL90/R90にして均等な広がり感にしています。
キーボードはセンター定位です。
同じような役割のパートが2つある場合は、左右対称の定位にすると自然な広がり感が得られます。
【ボリューム設定】
オートメーションは使用せず一定のボリュームです。
-広告-
AVID ( アビッド ) / Pro Tools 10
AVID / Pro Tools 10
CAKEWALK ( ケークウォーク ) / SONAR X1 Power Studio 25EX
CAKEWALK / SONAR X1
MOTU ( マークオブザユニコーン ) / Digital Performer 8
MOTU / Digital Performer 8
STEINBERG ( スタインバーグ ) / Cubase 7
STEINBERG / Cubase 7
リバーブ
-11dB
3−9.ボーカル
▲目次へ
ボーカルは各トラックごとに設定が異なりますので、以下の3パートに分けて説明します。
メインボーカル 「Vocal Main」トラック リードボーカル
サブボーカル1 「Vocal Sub1」トラック エンディングのロングトーン部分
サブボーカル2 「Vocal Sub2」トラック 2番Bメロ
メインボーカル
基本的に過剰なエフェクト処理は行わず、歌を自然な感じでオケに馴染ませる方向性で調整しました。調整前後をオケに合わせて比較してみましょう。
メインボーカル
調整前
>>>
メインボーカル
調整後
調整前はボーカルがオケに馴染んでおらず浮いている感じですが、調整後はオケと同じ空間で歌っているかの様に馴染んでいますね。
ボーカル単体でも聴いてみましょう。
メインボーカル
調整前(単体)
>>>
メインボーカル
調整後(単体)
調整後はリバーブが掛かっている事はハッキリと分かると思いますが、それ以外の違いはいまいち分かりにくいですね。
ボーカルの音質はオケと合わせた状態でないと良し悪しを判断しにくいので、以後は主にオケと合わせた音で調整内容を検証していきます。

ボーカルのトラックはエフェクトを GranComp >>IIEQalt の順でインサートしており、最後にリバーブを掛けています。詳しく設定を見てみましょう。
リバーブ
-16dB
【GranComp設定】
1段目のGraCompは、音量を均一化して歌をオケに馴染ませるために使用しています。
RATIO 8:1 THRESHOLD -22.5dB
ATTACK 60ms OUTPUT 0.0dB
RELEASE 100ms OUT CELING 0.0dB
MAXX(音量自動補正) OFF 適宜
オケにのせて、COMP処理前を聴いてみましょう。
COMP処理前
歌詞がハッキリ聴き取れて良い感じなのですが、少しオケに馴染んでおらず浮いている印象がありましたので左表の設定でCOMP処理を行ないました。
「アタック遅め、リリース遅め」6dBくらいリダクションする様にCOMPをかけています。
声の質感は変えずに音量を均一化してデコボコ感を無くし、少し引っ込んだ音像にして歌をオケに馴染ませる(悪く言えば埋もれさせる)狙いです。処理後の音を聴いてみましょう。

COMP処理後
音量自動補正を使用していませんので、COMPでリダクションした分だけ音量が下がり、均一化されて奥へ引っ込んでオケに馴染みましたね。
次段のEQで補正しますので、COMP処理後の段階ではこのくらい埋もれた感じでも大丈夫です。

高いレシオで圧縮してリリース値を遅めに設定すると、音の余韻部分が圧縮されて奥へ引っ込んだ様な音になります。
アタック値を遅目にすると音の立ち上がり部分が圧縮されず、発声時のアタック部分の質感を保つことができて不自然な感じになりません。いわゆる「聴こえるけれど奥へ引っ込んだ音」となります。この「アタック遅め、リリース遅め」は浮き出た音を周りに馴染ませたい場合に大変有効な設定です。
【IIEQalt設定】
2段目のIIEQaltは不要な低音のカットと、COMP処理で引っ込んだ音像の補正に使用しています。処理後の音を聴いてみましょう。
センター周波数 EQタイプ Q ゲイン
11713Hz ピーキング 0.10 +3.4dB
74Hz シェルビング 0.50 -20.0dB
EQ処理後
オケへの馴染みを保ちつつ、音が明るくなって前に出てきた感じになりましたね。
2つのEQポイントには次のような意味があります。

11713Hz ブースト 声の明るい成分を強調して、音抜けを良くする。
74Hz以下 カット 「ボッ」「ボフッ」などのポップノイズを減らす。
ボーカルの音質調整は非常に重要な部分ですので詳しく検証してみましょう。
74Hz以下をカットしてポップノイズを減少させる処理
まずはボーカル単体でEQ処理前の音を聴いてみましょう。
EQ処理前(単体)
「なんの自由もない箱入り娘 あるママにらいとびだして」 赤字で示した部分に発声時の風で「ボッ」「ボフッ」という音(=ポップノイズ)が入っています。このようなポップノイズは、スッキリとした音に仕上げるためには極力無い方が良いです。
ポップノイズは80Hz以下の低域が主な成分ですので、シェルビングでバッサリとカットすると減らす事ができます。処理後を聴いてみましょう。
EQ処理後(単体)
ポップノイズがかなり減少したのが分かりますね。
「なんの不自由もない箱入り娘 あるママに逆らいとだして」という感じで「ひ」の発音のところのポップノイズが結構残ってしまっていますが、オケと合わせた状態で気にならなければ問題ないです。
ノイズを減そうとするあまり低域をカットしすぎると、声の太さや音程感に影響する200Hz以上の成分も変わってしまい、歌が下手に聴こえたり声が細くなる場合があります。極端過ぎるローカットは禁物です。
11713Hzをブーストして音抜けを良くする
これは声の「シャリシャリ」した成分を強調して、オケに合わせた時の音抜けを良くする処理です。
試しに12kHzを緩いQで極端にブーストした音を聴いてみましょう。
12kHzを極端に
ブースト(単体)
いわゆる「通る音」になったのが分かりますね。このサンプルくらい極端にブーストすると耳障りな音になってしまいますので、実際にはオケとのバランスをみながらほんの少しブーストする程度の調整となります。
高域の調整は歌い手の声質により帯域・調整量が変わります。元々「シャリシャリ」「カリカリ」感の強い声質には高域の調整は不要な場合も多いです。
【リバーブ設定】
オケと馴染ませる目的で、センド量-16dBで自然なリバーブを掛けています。
今回は周りから浮かない程度の自然な仕上がりにしたかったので、「意識して聴けば分かる」程度の残響の量にしたつもりです。
リバーブ
処理後
【PAN設定】
PANはセンターです。
リードボーカルは曲の主役である事がほとんどなので、もっとも目立つセンターに定位させるのが一般的です。
【ボリューム設定】
常に一定のボリュームです。
サブボーカル1
終盤のギターソロに重なって入るボーカルのロングトーンです。まずは調整前後を比較してみましょう。
サブボーカル1
調整前
>>>
サブボーカル1
調整後
調整前はオケに馴染んでおらず、ボリュームが大きくてギターソロより音が前に出ていますが、調整後は音が奥へ引っ込んでギターソロの邪魔をしない様になっていますね。
単体でも聴いてみましょう。
サブボーカル1
調整前(単体)
>>>
サブボーカル1
調整後(単体)
単体で聴くと、調整後はリバーブで残響が加えられており、また音質も少しこもった感じになっている事が分かります。
これはエフェクトを GranComp >>IIEQalt の順でインサートし、最後にリバーブを掛ける事で調整しています。詳しく設定を見てみましょう。
リバーブ
-16dB
【GranComp設定】
1段目のGraCompはリードボーカルと全く同じ設定で、音量を均一化して歌をオケに馴染ませるために使用しています。
RATIO 8:1 THRESHOLD -22.5dB
ATTACK 60ms OUTPUT 0.0dB
RELEASE 100ms OUT CELING 0.0dB
MAXX(音量自動補正) OFF 適宜
COMP処理後
リダクションされて奥に引っ込んだ音になりました。
【IIEQalt設定】
2段目のIIEQaltは不要な低音のカットと、COMP処理で引っ込んだ音像を更に奥に引っ込ませるために使用しています。処理後の音を聴いてみましょう。
センター周波数 EQタイプ Q ゲイン
7683Hz シェルビング 0.50 -12.0dB
74Hz シェルビング 0.50 -20.0dB
EQ処理後
COMP処理後より、更に音が奥に引っ込みましたね。
2つのEQポイントには次のような意味があります。

7683Hz以上カット 声の明るい成分を減らして音抜けを悪くする。
74Hz以下 カット 「ボッ」「ボフッ」などのポップノイズを減らす。
8kHz以上の高域をカットすると、声の基本キャラクターを変える事なく、ツヤやハリが減ってこもった音になります。わざと歌の抜けを悪くしたい時に効果的なEQ処理です。
【リバーブ設定】
メインボーカルと同じで、オケと馴染ませるためにセンド量-16dBでリバーブを掛けています。
リバーブ処理後
【PAN設定】
PANはL40にしてセンターのギターソロを避けています。
【ボリューム設定】
ボリュームオートメーションを駆使して、一旦フェードアウトしたあと再度音が戻ってくるように調整しています。
※オートメーションについては後述します。
サブボーカル2
2番Bメロのメインとは別の歌い手によるボーカルです。まずは調整前後を比較してみましょう。
サブボーカル2
調整前
>>>
サブボーカル2
調整後
調整前は歌のオケからアンバランスに浮いている感じがありますが、調整後は音量・音質ともにオケに馴染んでいますね。
このトラックもメインボーカル同様に GranComp >>IIEQalt の順でエフェクトをインサートしており、最後にリバーブを掛けています。詳しく設定を見てみましょう。
リバーブ
-16dB
【GranComp設定】
1段目のGraCompは、音量を均一化して歌をオケに馴染ませるために使用しています。
RATIO 8:1 THRESHOLD -22.5dB
ATTACK 60ms OUTPUT 0.0dB
RELEASE 302ms OUT CELING 0.0dB
MAXX(音量自動補正) OFF 適宜
左表の設定でメインボーカルと同様に「アタック遅く、リリース遅く」でCOMP処理して、「聴こえるけれど引っ込んだ音」を狙っています。張り出し感が強い声質だったため、リリースをメインボーカルより遅く302msに設定して、サブボーカルが前に出過ぎない様に調整しています。

それでは、COMPのリリース設定でどれだけ音の前後感が変わるかを確かめるため、試しにリリースを100msにした音と302msにした音を聴き比べてみましょう。その他のパラメーターは左表の通り同一です。
リリースの設定による音の前後感の違い
リリース
100ms
リリース
302ms
302msの方が全体に音量が落ち着いて、前に張り出してくる感じが少なくなっていますね。なおかつ「力いっぱい歌っている感じ」は失われていません。
リリースを遅く設定しすぎるとCOMPが掛かりっぱなしになるため、「単に音量が下がっただけの音」「良く聞こえない音」になってしまいます。
【IIEQalt設定】
2段目のIIEQaltは不要な低音のカットと、COMP処理で引っ込んだ音像の補正に使用しています。設定はメインボーカルと全く同じです。
センター周波数 EQタイプ Q ゲイン
11713Hz ピーキング 0.10 +3.4dB
74Hz シェルビング 0.50 -20.0dB
【リバーブ設定】
センド量-16dBで自然なリバーブを掛けています。メインボーカルと同じ設定です。
リバーブ処理後
【PAN設定】
PANはL40です。特に深い意味はありませんので、お好みで設定して問題ありません。
【ボリューム設定】
常に一定のボリュームです。


3−10.コーラス
▲目次へ
コーラスは各トラックごとに設定が異なりますので、以下の2パートに分けて説明します。
サビコーラス 「Chorus1a-3c」トラック サビの3声×3トラックの多重録音のコーラスパート
Bメロコーラス 「Chorus4a,4b」トラック Bメロの2トラックの多重録音のコーラスパート
サビコーラス
3声×3トラックの分厚いコーラスパートです。調整前後を比較してみましょう。
サビコーラス
調整前
>>>
サビコーラス
調整後
調整後の方がすっきりとオケに馴染んでいる感じがありますね。コーラス単体でも聴き比べてみましょう。
サビコーラス
調整前(単体)
>>>
サビコーラス
調整後(単体)
調整後の方が、余分な中低域の無いすっきりとした音質になっており、リバーブで残響が付け加えられて豪華になっています。
サビのコーラス合計9トラックすべてインサートエフェクト・リバーブは同じ設定です。IIEQaltで音質を整えてリバーブで残響を加えています。詳しく見てみましょう。
中音 低音 高音
リバーブ
-16dB
リバーブ
-16dB
リバーブ
-16dB
【IIEQalt設定】
インサートしているIIEQaltは不要な低音のカットと、すっきりとした音に調整するために使用しています。
センター周波数 EQタイプ Q ゲイン
11713Hz ピーキング 0.10 +3.4dB
819Hz ピーキング 0.10 -2.0dB
74Hz シェルビング 0.50 -20.0dB
EQ処理前後の音を単体でもう一度比較してみましょう。
EQ処理前
(単体)
EQ処理後
(単体)
EQ処理前は「いつだっの”て”の部分で「ボフッ」という風の音(=ポップノイズ)が目立ちますが、EQ処理後は目立たなくなりました。また、声の野太い成分が減って、全体的にすっきりした細い感じの音質になっている事が分かると思います。
この3つのEQポイントには次の様な意味があります。
11713Hz ブースト 声の明るい成分を強調して音抜けを良くする。
819Hz カット 声の太い成分を減らして音をスッキリさせる。
74Hz以下 カット 「ボッ」「ボフッ」などのポップノイズを減らす。
800Hz周辺は声の芯となる成分です。この帯域をブースト/カットする事で声の太さを増減する事ができます。コーラスをさりげなく薄く重ねたい場合は、この帯域を多めにカットするとメインの音を邪魔しない感じになります。今回は説明の都合上9トラック個別にEQをインサートしていますが、グループにして1個のEQでまとめて処理しても問題ありません。
【リバーブ設定】
センド量-16dBでリバーブを掛けています。多重録音の声にリバーブで残響を加えると格段に豪華な感じになりますね。
リバーブ処理後(単体)
【PAN設定】
中音をセンター、高音をL60、低音をR60に定位させています。この設定はお好みで問題ありません。
【ボリューム設定】
高音パートは低音パートより大きく聴こえる傾向があるため、高音パートの音量を他より抑え目にしてあります。オートメーションは使用していません。
Bメロコーラス
同音程を2トラック重ねたコーラスパートです。調整前後を比較してみましょう。
Bメロコーラス
調整前
>>>
Bメロコーラス
調整後
大きな違いはありませんが、調整後の方が若干抜けが良い音にになっています。単体でも聴き比べてみましょう。
Bメロコーラス
調整前(単体)
>>>
Bメロコーラス
調整後(単体)
調整後は高域が強調されて明るい音になり、リバーブで残響が加えられている事が分かりますね。詳しく設定を見てみましょう。
リバーブ
-16dB
リバーブ
-16dB
【IIEQalt設定】
唯一インサートしているIIEQaltは、不要な低音のカットと、高域を強調して音を明るくするために使用しています。
設定はメインボーカルと全く同じです。
センター周波数 EQタイプ Q ゲイン
11713Hz ピーキング 0.10 +3.4dB
74Hz シェルビング 0.50 -20.0dB
EQ処理前
(単体)
EQ処理後
(単体)
処置後はより明るい音になっていますね。
【リバーブ設定】
センド量-16dBでリバーブを掛けています。お好みで設定して問題ありません。
リバーブ処理後(単体)
【PAN設定】
2トラックを左右対称にL70/R70に定位させています。お好みで設定して問題ありません。
【ボリューム設定】
オートメーションを使用して、メインボーカルの邪魔をしない様にボリュームを調整しています。
※オートメーションについては後述します。

>>次ページ
レコーディング編 ミキシング編その1 ミキシング編その2 ミキシング編その3
▲ページ先頭へ
Studio sus4 TOPへ戻る
Copyright(c)2005-2013 Studio sus4 All Right Reserved.