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Studio sus4 (スタジオサスフォー) 西武池袋線 東久留米駅 徒歩2分
レコーディング編 ミキシング編その1 ミキシング編その2 ミキシング編その3
1.はじめに
1-1.サンプル曲「時はウラハラ」 2-6.コーラスの録音 3-6.ベース
1-2.特別な機材は使わない 2-7.レコーディングで良くある質問 3-7.エレキギター
3-8.アコースティックギター、キーボード
2.レコーディング編 3.ミキシング編 3-9.ボーカル
2-1.ドラムの録音 3-1.素材とプラグイン 3-10.コーラス
2-2.エレキベースの録音 3-2.完成状態 3-11.ボリュームのオートメーション処理
2-3.エレキギターの録音 3-3.マスターセクション 3-12.全体のバランスを考える
2-4.アコースティックギターの録音 3-4.ドラム 3-13.ミキシングでよくある質問
2-5.ボーカルの録音 3-5.タンバリン

ここからはミキシングについて説明します。レコーディング編を飛ばしてここから読み始めても大丈夫です。

3.ミキシング編
3−1.素材とプラグイン
▲目次へ
レコーディング編で録音した素材のWAVファイルを以下にまとめますので、DAWをお持ちの方は是非ダウンロードして実際にDAWを操作しながら以下をお読み下さい。
録音レートは16bit/44.1kHzで、曲のテンポはBPM=124です。 
※DAWをお持ちでない方でも問題なく読める内容になっていますのでご安心下さい。

WAVファイルダウンロード ※パート毎にZIPファイルになっています。
ボーカル Vocal Main.wav :リードボーカル
Vocal Sub1.wav :アウトロ
Vocal Sub2.wav :2番Bメロ
コーラス Chorus1a,b,c.wav :サビ中 
Chorus2a,b,c.wav :サビ下
Chorus3a,b,c.wav :サビ上
Chorus4a,b.wav :Bメロ
ベース・
キーボード
Bass.wav :ベース
Bell.wav :ベル
Click124.wav :クリック
ギター Gutar1.wav :リズムギター1(Line6)
Gutar2.wav :リズムギター2(Soldano)
Gutar3.wav :サビ シーケンス
Solo1.wav :ソロ
Solo2.wav :オブリ
AGuitar Line.wav :アコギ ライン
AGuitar Mic.wav :アコギマイク
ドラム OH hihat.wav :オーバーヘッド ハイハット側
OH Ride.wav :オーバーヘッド ライド側
Kick.wav :バスドラム
Snare.wav :スネア
Tamb.wav :タンバリン
クリックのファイルを除いた、全28個WAVファイルを下の写真の様に先頭を揃えてDAW上に読み込んで下さい。
説明上の混乱を防ぐため、各トラック名は読み込んだWAVファイル名と同じにする事をおすすめします。

※クリックで拡大

作業には以下6種類の無料のVSTプラグインを使用します。
プラグイン名と配布元を記載しますので各自で入手下さい。VST非対応のDAWをお使いの方は同機能の他製品で代用下さい。
【注意】無料プラグインの入手・利用は配布元メーカーの注意事項に従って、ご自身の責任で行ってください。
使用プラグイン
<種類> <プラグイン名> <メーカー> <URL> <ダウンロードページ>
VUメーター PSP VintageMeter PSP http://www.pspaudioware.com/ [Tools and Meters]
マキシマイザー BuzMaxi3 BUZZROOM http://www.x-buz.com/ [Products] - [BuzMaxi 3]
コンプレッサー GranComp BUZZROOM http://www.x-buz.com/ [Products] - [BuzComp Free Series]
リバーブ Room Reverb BUZZROOM http://www.x-buz.com/ [Products] - [OLD buzzroom VST Plugins Pack]
イコライザー IIEQ alt DDMF http://www.ddmf.eu/ [FREEWARE] - [Download IIEQ Morcky]
オーバードライブ mda Overdrive mda-vst http://mda.smartelectronix.com/ [Download all VST plug-ins for...]


3−2.完成状態
▲目次へ
以下、ミキシングを解説していくにあたり、一から順に作業手順を説明するのではなく、既に完成した状態のミックスについてミキサーを見ながら
「このトラックは何故このような設定にしてあるのか?」をパート毎に説明する方法を取りたいと思います。
完成ミックス
「時はウラハラ」
フルバージョン
「時はウラハラ」
カラオケバージョン
以下に完成形のミキサー設定を写真と一覧表で記しますので、DAWをお持ちの方は理屈は後回しにしてミキサーを同じ状態にしてみましょう。
設定が終わったら曲を再生して上記の完成ミックスと同じ音になっている事を確認しましょう。

※ボリュームのオートメーションについては後ほど説明します。
※説明を分かりやすくするため、「複数トラックをグループにして、まとめてエフェクトを掛ける方法」を今回はあえて使用していません。
  CPUパワーを節約したい場合は、リズムギターやコーラスをグループにまとめて、使用するエフェクト数を減らして下さい。
【図1】 インサートエフェクト、PAN、ボリューム画面写真
※クリックで拡大
【図2】 リバーブセンド画面写真
※クリックで拡大
【図2】 リバーブの設定  ※1個のリバーブをセンド/リターンで全トラックで共用します。
<パラメーター> <設定値>
TYPE (部屋の種類) C
DENSITY (リバーブ密度) 3
PRE DELAY (残響発生までの時間) 25msec
TIME (残響時間) 30%
WIDTH (リバーブの広がり) 100%
HI DAMP (高音の音色調整) 50%
TONE (音色) 75%
WET (エフェクト音) 100%
DRY (ドライ音) 0%
広目の部屋をイメージした設定です。
あまり残響が伸びない様にTIMEを短めにしてあります。
エフェクトセンドで使用するのでドライ音はゼロに設定します。
【図4】 ミキサー設定一覧表
※ボリュームの少数点以下の数値、IIEQaltの周波数設定値は多少の誤差があっても問題ありません。
※IIEQaltの"S"の表記はシェルビングタイプを表します。
※PANは最大値を100とした場合の数値です。
インサート
エフェクト1
No Effect
No Effect
GranComp
(RATIO)10:1
(AT) 50ms
(REL) 5ms
(THS)-28.0dB
(OUT)+1.5dB
GranComp
(RATIO)10:1
(AT) 50ms
(REL) 5ms
(THS)-28.0dB
(OUT) 0.0dB
GranComp
(RATIO)40:1
(AT) 60ms
(REL) 5ms
(THS)-46.0dB
(OUT)+2.0dB
No
Effect
mda Ovdrive
(Drive) 2%
(Muffle) 5%
(Out) 0.0dB
mda Ovdrive
---->同左
mda Ovdrive
---->同左
インサート
エフェクト2
IIEQalt
(10214Hz)
+2.0dB Q0.1
S(6325Hz)
+2.4dB Q0.5
IIEQalt
---->同左
IIEQalt
(102Hz)
+5.0dB Q0.5
(8139Hz)
+8.0dB Q0.5
IIEQalt
S(74Hz)
-20.0dB Q0.5
(263Hz)
+2.6dB Q0.5
(12099Hz)
+8.0dB Q0.1
IIEQalt
S(364Hz)
-20.0dB Q0.5
No
Effect
IIEQalt
(12012Hz)
+1.80dB Q0.1


IIEQalt
---->同左
IIEQalt
---->同左
リバーブセンド -21dB -21dB -33dB -19dB -11dB OFF -23dB -23dB -13dB
PAN L70 R70 C C L50 C L90 R90 C
ボリューム -2.70dB -2.70dB -1.30dB -0.45dB -8.00dB -6.80dB -7.14dB -7.14dB -7.00dB
トラック名
トラック番号
OH Hihat OH Ride Kick Snare Tamb Bass Guitar1 Guitar2 Guitar3
1 2 3 4 5 6 7 8 9
オーバーヘッド
ハイハット側
オーバーヘッド
ライド側
バスドラム スネア タンバリン ベース リズムギター1
Line6
リズムギター2
Soldano
サビ
シーケンス
mda Ovdrive
(Drive) 9%
(Muffle) 11%
(Out) 0.0dB


mda Ovdrive
---->同左
No Effect
No Effect
No Effect
GranComp
(RATIO) 8:1
(AT) 60ms
(REL) 100ms
(THS)-22.5dB
(OUT) 0.0dB
GranComp
---->同左
GranComp
(RATIO) 8:1
(AT) 60ms
(REL) 302ms
(THS)-22.5dB
(OUT) 0.0dB
IIEQalt
(12012Hz)
+1.80dB Q0.1


IIEQalt
---->同左
No Effect
No Effect
No Effect
IIEQalt
S(74Hz)
-20.0dB Q0.5
(11713Hz)
+3.4dB Q0.1
IIEQalt
S(74Hz)
-20.0dB Q0.5
S(7683Hz)
-12.0dB Q0.5
IIEQalt
S(74Hz)
-20.0dB Q0.5
(11713Hz)
+3.4dB Q0.1
-23dB -16dB -18dB -18dB -11dB -16dB -16dB -16dB
C L60 L90 R90 C C L40 L40
-5.50dB -10.50dB -12.00dB -13.00dB -12.50dB -3.20dB -3.48dB -3.50dB
Solo1 Solo2 AGuitar Mic AGuitar Line Bell Vocal Main Vocal Sub1 Vocal Sub2
10 11 12 13 14 15 16 17
ソロ 2Bメロ
オブリ
アコギ
マイク
アコギ
ライン
キーボード リード
ボーカル
アウトロ 2Bメロ
No
Effect
No
Effect
No
Effect
No
Effect
No
Effect
No
Effect
No
Effect
No
Effect
No
Effect
No
Effect
No
Effect
IIEQalt
(2862Hz)
-2.6dB Q6.5
(12012Hz)
+1.6dB Q0.1
S(6325Hz)
+2.0dB Q0.5
IIEQalt
S(74Hz)
-20.0dB Q0.5
(819Hz)
-2.0dB Q0.1
(11713Hz)
+3.4dB Q0.1
IIEQalt
-->同左
IIEQalt
-->同左
IIEQalt
-->同左
IIEQalt
-->同左
IIEQalt
-->同左
IIEQalt
-->同左
IIEQalt
-->同左
IIEQalt
-->同左
IIEQalt
S(74Hz)
-20.0dB Q0.5
(11713Hz)
+3.4dB Q0.1
IIEQalt
-->同左
BuzMaxi3
(MODE)
AGGRESSIVE
(MAKE UP)
+10
(OUT CEILING)
-0.3
PSP VinMeter

-16dB -16dB -16dB -16dB -16dB -16dB -16dB -16dB -16dB -16dB -16dB OFF
C C C R60 R60 R60 L60 L60 L60 L70 R70 C
-9.00dB -9.00dB -9.00dB -7.00dB -7.00dB -7.00dB -11.50dB -11.50dB -11.50dB -4.96dB -4.96dB 0.00dB
Cho.1a Cho.b Cho.1c Cho.2a Cho.2b Cho.2c Cho.3a Cho.3a Cho.3a Cho.4a Cho.4b Stereo Out
18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
サビ中1 サビ中2 サビ中3 サビ下2 サビ下3 サビ下3 サビ上1 サビ上2 サビ上3 Bメロ1 Bメロ2 マスターアウト
以上がボリュームオートメション以外の全ての設定です。
今回は
「派手なエフェクトはかけずに生々しい音にする」という方向性で仕上げましたので必要最低限のエフェクトしか使用していません。

以降では各トラックの設定を詳しく解説していきます。
どのパートから読み始めても大丈夫な様に構成していますのでお好きなパートからお読み下さい。

3−3.マスターアウト
▲目次へ
曲全体の音質と音量を調整するマスターアウトのセクションでは、IIEQalt >> BuzMaxi3 >> PSP VintageMeter の順でエフェクトをインサートしています。
IIEQaltで音質を調整、BuzMaxi3で音量上げをして、最終的な音量の確認をPSP VintageMeterで行う形です。

これらは、プロの作品においては「マスタリング」と呼ばれる作業の中で行う工程であり、本来はレコーディング・ミキシングとは別カテゴリーの作業なのですが
今回は自主制作を想定していますのでミキシング作業の一部として説明していきます。
【IIEQalt設定】
最上段にインサートしているIIEQaltはマスターEQとして全体の音質の微調整を行っています。

※クリックで拡大
まずはEQ処理前の音を聴いてみましょう。
EQ処理前
これはこれで悪くないのですが、もう少し高域を強調して現代的な派手な音にしたかったので、次の様にEQ処理をしました。
センター周波数 EQタイプ Q ゲイン
6325Hz シェルビング 0.50 +2.0dB
12012Hz ピーキング 0.10 +1.6dB
2862Hz ピーキング 6.50 -2.6dB
EQ処理後
全体的に音が明るい感じになったのがお分かりでしょうか? 調整した3つのEQポイントには次のような意味があります。
6325Hz以上 ブースト 高域を全体的に強調して音抜けを良くする。
12012Hz ブースト ギターの輪郭をハッキリさせる。
2862Hz カット 上記2つの高域ブーストで持ち上がってしまったノイズ成分を減少させて聴きやすい音にする。
マスターEQは調整量が微量であるため音の変化が分かりにくいと思いますので、以下でもう少し詳しく説明します。
シェルビングで6325Hz以上をブースト
全体的に高域を強調するのが目的です。効果を分かりやすくするため試しに6325kHz以上を思い切り極端にブーストした音を聴いてみましょう。
6325Hz以上 極端にブースト
シンバル類の音やボーカルの高音成分が強調される事が分かりますね。
このサンプルの様に高域を強調しすぎると相対的に低域が細く聴こえる様になるので、実際にはうっすらとブーストします。
12012Hzを緩いQでブースト
上記の高域強調のEQにプラスして、更にギターの輪郭をハッキリさせるのが目的です。試しに12012kHzを極端にブーストした音を聴いてみましょう。
12012Hz 極端にブースト
ギターの音のジャリジャリ感が強調されて明瞭度がアップしましたね。やりすぎると汚い印象の音になるのでうっすらとブーストするのがポイントです。
2862Hzを鋭いQでカット
かなり隠し味的な効果ですが、曲全体に含まれるノイズっぽい成分を減少させて耳当たりを良くするために設定しています。
上記の二つの高域ブーストで音を派手に明るくした分、副作用として全体に含まれるノイズっぽさも増えてしまいます。それを減少させる狙いです。
ノイズっぽい成分がどんなものか、まずは2862kHzを鋭いQで極端にブーストして確かめてみましょう。
2862Hz 極端にブースト
この様に2.5-3kHz周辺には「シーシー、ヒーヒー」という耳障りな成分が含まれており、これをピンポイントでカットすると音がスッキリします。
ただし、この帯域はギターの歪みの感じを左右する帯域でもあるので、極端にカットするとギターに何か違和感のある音になってしまいます。
試しに2862Hzを極端カットした音を聴いてみましょう。
2862Hz 極端にカット
どうでしょう? 別に聴けない事は無いけど、ギターの音が一味足りない感じ・奥に引っ込んでいる感じになっていませんか?
こうならない様に、あくまで目立たない程度にカットするのが良いです。
マスターのEQは全体の音質の微調整が目的であり、上記サウンドサンプルの様な極端なブースト/カットを行う事はまず有りません。
どんな音源でも「単体で聴いても良く分らないけど、EQ処理前後を聴き比べれば確かに効果が分る」という感じの設定になる事が多いです。

マスターEQはミキシング中はひとまずフラットにしておいて、各トラックの設定が完了した最終段階で微調整するのが良いと思います。
【BuzMaxi3設定】
2段目のBuzMaxi3はレベルマキシマイザーとして、全体の音量を上げると同時にデジタルクリップの発生を防ぐ役割をしています。
このエフェクターの設定で曲全体の音量が決まります。
MODE(リミッティングのタイプ) AGGRESSIVE
MAKE UP(音量のブースト量) +10
OUT CELING(出力レベル制限値) -0.3
MODE
より音量が稼げるAGGRESSIVEに設定しています。
MAKE UP
音量のブースト量です。VUメーターの針が曲中に大体0VUを指す様に+10に設定しています。
OUT CELING
信号レベルの制限値です。-0.3に設定することで、以降の信号レベルが-0.3dBを越える事は無くなります。これにより、レベルが0.0dBを越えた場合に発生するデジタルクリップを防ぎます。
レベルマキシマイザーはミキシングの最初の時点でインサートしておくのがおすすめです。
それにより「ミキシング中の音≒完成品の音」となりますので、後から音量上げした場合に良くある「音量を上げたら音の感じが大きく変わってしまった」という問題が起こらず作業がスムーズに進みます。
【PSP VintageMeter設定】
最終段のPSP Vintage Meterは曲の最終的な音量レベルの監視に使用します。BuzMaxi3で上げた音量が市販レベルになっているか、このメーターで目視確認するわけです。最終音量が決まった後は使用しませんのでOFFしても構いません。
VU/ PPM (聴感レベル/信号ピークレベル) VU
0VU refer. level (0VU指示時の音量レベル) -6.0dBFS
他パラメーター 初期設定
VU/ PPM
瞬間的な信号レベル(PPM)を表示するか、聴感上の音量レベル(VU)を表示するかを選択します。マスターの音量を決めるには聴感上のレベル表示が必要ですのでVUを選択します。
0VU refer. level
VUメーターが0VUを指した時の音量レベルを設定します。
現在の流行では大きめの音量が好まれますので、-6.0dBFSに設定して、大きなレベルを監視できる様にします。
以上の様に設定した後、曲を再生してメーターの針が0VU付近を指す様に前段のBuzMaxi3でブースト量を調整すると、市販されている音源と同レベルの大音量に仕上がります。
通常のDAWのミキサーのレベルメーターは「瞬間的な信号レベル」しか表示してくれません。これは録音レベルの管理には大変便利なのですが、ミキシングで必要なのは「聴感上の音量レベル」です。最終的な音の大きさはVUメーターで判断しましょう。
3−4.ドラム
▲目次へ
ドラムはオーバーヘッドハイハット側、ライド側、バスドラム、スネアの4トラックで録音しています。
各々の説明に入る前に調整前後のドラム全体の音を比較してみましょう。
ドラム調整前
>>>
ドラム調整後
音色の基本キャラクターは変えずに、「太鼓を強打している感じ」「金物が派手に鳴っている感じ」を強調して、より荒々しい迫力あるサウンドになるように調整しています。
各トラックをどのように設定したのかを詳しく見ていきましょう。
オーバーヘッド
今回はマイク使用数を制限して録音した都合上、オーバーヘッドの2トラックだけでシンバル類とタム類の全部をバランス良く聴かせなければなりません。
調整前後をオーバーヘッドの2トラックだけで比較してみましょう。
オーバーヘッド
調整前
>>>
オーバーヘッド
調整後
調整後はハイハット、クラッシュシンバルの高域が強調されて派手な感じになっていますね。
2トラックともインサート・リバーブは共通の設定で、PANは2トラックを左右に振ってステレオの広がりを出しています。詳しくみていきましょう。
リバーブ
-21dB
リバーブ
-21dB
【IIEQalt設定】
唯一インサートしているIIEQaltはシンバル類の高域を強調する様に設定してあります。
まずはEQ処理前の音を聴いてみましょう。
EQ処理前
タム類は問題ないのですが、シンバル類はもう少し目立っても良い気がしましたので、表のようにEQしました。
センター周波数 EQタイプ Q ゲイン
6325Hz シェルビング 0.50 +2.4dB
12012Hz ピーキング 0.10 +2.0dB
EQ処理後
タムの音はあまり変わらず、シンバル類の高音が強調されてグッと前に出てきましたね。このEQポイントには以下の意味があります。
6325Hz以上 ブースト 高域を全体的に強調。
12012Hz ブースト 緩いQでブーストして、シンバルの高音成分をさらに強調。
8kHz周辺にあるタムのアタック成分を避けて、タムの音が変わらない様にEQしているのがポイントです。
【リバーブ設定】
センド量-21dBで残響を加えています。この設定はお好みで問題ない部分です。
リバーブ処理後
【PAN設定】
左右対称にハイハット側:L、ライド側:Rに設定して、ドラマーから見た定位にしてあります。この左右の設定は特に深い意味はありません。
PANの開き具合は70(MAX=100)に設定してありますが、これもお好みで設定して問題ありません。
【ボリューム設定】
基本的に左右均等なボリュームに設定してありますが、タムが聴こえにくい箇所、シンバルが耳障りな箇所など、要所でオートメーションでボリュームを変化させて聴きやすいバランスにしています。
※オートメーションについては後述します
バスドラム
通常、バスドラムは低音専用のマイクで録音する事が多いですが、今回はボーカル用マイクのSHURE SM58で録っているため低域迫力不足な感じが否めません。
これを補正するためにコンプレッサーとイコライザーでかなり積極的な処理を行なっています。まずは調整前後のバスドラムの音を比較してみましょう。
バスドラム
調整前
>>>
バスドラム
調整後
単純に音量がアップした上、”パワー感”がある派手な音に変わりましたね。設定を見ていきましょう。
リバーブ
-33dB
【GranComp設定】
1段目のGraCompは、太鼓の鳴りを強調して音が前に出てくる様にする狙いでインサートしています。
COMP処理前の音を聴いてみましょう。
COMP処理前
これはこれで良い感じの音ですが、もっと音が前に出てくるような荒々しい感じが欲しかったので、表のようにCOMPを設定しました。
RATIO 10:1 THRESHOLD -28.0dB
ATTACK 50ms OUTPUT 1.5dB
RELEASE 5ms OUT CELING 0.0dB
MAXX(音量自動補正) ON 他パラメーター 適宜
この設定は「不自然な圧縮感なく、アタックと太鼓の鳴りを強調して迫力を出す」という狙いです。処理後の音を聴いてみましょう。
COMP処理後
太鼓の余韻の部分が強調されて「ドーン」という感じになり、なおかつ不自然な音量の圧縮感はありませんね。
(かぶって入っているバスドラ以外の音も同時に大きくなっている事から、かなり深くCOMPが掛かっている事が分かるはずです)
THRESHOLDはにリダクション量が6dBから8dBとなる様に深く設定して、音量自動補正機能を使用したうえ、更にOUTPUTを1.5dBブーストして音量を微調整しています。その他のパラメーターはそれほど重視しておらず、お好みで問題ない思います。

この様に高いレシオで圧縮し、リリース値を早目に設定すると、音の余韻部分が強調されて、前に飛び出してくる様な存在感のある音になります。
また、アタック値を遅目に設定すると音の立ち上がり部分が圧縮されず、アタック感を保つことができて不自然な圧縮感が出ません。
この「アタック遅く、リリース早く」という設定は、COMPで音を前に出したい場合の基本の設定になります。
【IIEQalt設定】
2段目のIIEQaltは、低音とアタック感の増強のためにインサートしています。「音質の微調整」というよりも「音を積極的に加工する」という使い方です。
EQ処理前(COMP処理後)の音を聴いてみましょう。
EQ処理前
やはりもう少し低音が欲しいのと、ビーターがヘッドに当たる「ベチッ」という感じのアタックを強調したかったので、表のようにEQしました。
センター周波数 EQタイプ Q ゲイン
8139Hz ピーキング 0.50 +8.0dB
102Hz シェルビング 0.50 +5.0dB
EQ処理後
低音の迫力が増した上に、ビーターがヘッドに当たった瞬間のアタック音が強調されて派手な音になりましたね。
(かぶって入っている他の音の変化から、かなり強く高域をブーストしている事が分かりますね)

2つのEQポイントには次のような意味があります。
8139Hz ブースト 極端にブーストする事でアタック成分を強調する。
102Hz以下 ブースト 低域不足を補正して迫力を増強する。

102Hz以下をシェルビングで大きくブーストしているのは、低音用マイクの周波数特性をシミュレートしているつもりの設定です。これによりSM58の低域不足を補正する狙いです。この違いは低域が良く出るスピーカーで聴き比べないと分かりにくいかも知れません。

100Hz以下の低域は迫力の部分では重要ですが、ハッキリと音の違いを聴き取れない帯域であり、「聴感上の音の感じ」「音抜けの良さ」は高域のアタック感で決まる割合の方が大きいと思います。「バスドラム=低音」というイメージに囚われすぎない事が大切です。
アタック成分は4kHz周辺や8kHz周辺に多く含まれ、この帯域のブースト/カットでアタック感を調整できます。4kHz周辺は「チッ」「キッ」という耳を突く成分、8kHz周辺は更に高く鋭い感じの成分ですので、求める音によって調整帯域を選びましょう。
【リバーブ設定】
センド量-33dBで気持ち程度のリバーブを掛けています。それほど重要な設定ではありません。
リバーブ処理後
【PAN設定】
PANはセンターです。
バスドラムやベースなどの低音楽器は、よほどの狙いが無い限り、センターに定位させた方が良いです。
低音が左右どちらかに偏っていると、曲の重心も全体的に偏っているように聴こえるため、聴いていて違和感のある音像になってしまいます。
(逆に、わざと違和感のある音像にしたい場合はこの現象を積極的に利用すれば良いと思います)
【ボリューム設定】
オートメーションは使わずに常に一定のボリュームです。
スネア
まずは調整前後のスネアの音を比較してみましょう。
スネア調整前
>>>
スネア調整後
調整後は音が明るくなり、パワー・太鼓の鳴りが増して大分派手な音になりましたね。設定を見ていきましょう。
リバーブ
-19dB
【GranComp設定】
1段目のGraCompは、太鼓の鳴りを強調してパワー感をアップする狙いでインサートしています。
COMP処理前の音を聴いてみましょう。
COMP処理前
良く録れていますが、曲調的にもっと荒々しい「バン」という感じが欲しいので、表のようにCOMPを設定しました。
RATIO 10:1 THRESHOLD -28.0dB
ATTACK 50ms OUTPUT 0.0dB
RELEASE 5ms OUT CELING 0.0dB
MAXX(音量自動補正) ON 他パラメーター 適宜
バスドラムとほぼ同じで、「アタック遅く、リリース早く」という設定にして「アタックと太鼓の鳴りを強調して迫力を出す」という効果を狙っています。聴いてみましょう。

COMP処理後
音色の基本キャラクターは変わっていませんが、余韻部分の音量が持ち上がって音が伸びた感じになり、パワー感が増しましたね。
スネアのトラックにハイハットが大きくかぶって録音されていると、深くCOMPをかけた場合に、肝心のスネアよりもハイハットの方が不必要に目立ってしまう事があります。こういった事態を避ける為に録音時にハイハットのかぶりを減らす努力が必要なのです。
【IIEQalt設定】
2段目のIIEQaltは、余分な低音のカット、太鼓の迫力アップ、音抜けの改善を狙いにしてインサートしています。
COMP処理によってパワー感が増した音を、更にEQで調整していきます。
センター周波数 EQタイプ Q ゲイン
12099Hz ピーキング 0.10 +6.0dB
263Hz ピーキング 0.50 +2.6dB
74Hz シェルビング 0.50 -20.0dB
EQ処理後
余分な低音が無くなりスッキリとしたうえ、明瞭さが強調されてこもった感じが消えましたね。
3つのEQポイントには次のような意味があります。
12099Hz ブースト 高域を全体的に強調して音抜けを良くする、スナッピーの感じを強調する。
263Hz ブースト 12kHzブーストで高域が強調された分、音が細い感じになるので、「ボン、バン」という成分を上げて音の太さを維持する。
74Hz以下 カット かぶって入っているバスドラム・タムの余分な低域を全てカットして、こもった感じを減らす。

80Hz以下の低域はスネアでは不要な場合が多いので、結構大胆にばっさりとカットして構わないと思います。
現代のレコーディングでは、スネア表面と裏面に各1本のマイクを立てて録音し、表の音と裏のスナッピーの音の混ぜ具合を調整できるようにするのが普通です。しかし今回の様に表面しか録っていない場合は、8-12kHz周辺のブーストでスナッピーの「シャラシャラ」という感じを強調する事が出来ます。

【参考】スネアの成分分析
100Hz以下 よく聴き取れないこもった感じ 2k-3kHz 「ジャッ」 ちょっと汚い感じ
200-300Hz 「バン」「ボン」 太い感じ 4k-7kHz 「チャッ」 耳を突く鋭い感じ
400-700Hz 「ポヨン」「ペヨン」 ドラマー言うところの倍音成分 8k-12kHz 「シャッ」「シュッ」 空気感を含む高音成分
800-1.6KHz 「コン」「カン」 金属質な感じ 12kHz以上 よく聴き取れないが存在の有無は判別できる
【リバーブ設定】
センド量-19dBで比較的深めに残響を加えています。お好みで設定して問題ない部分です。
リバーブ処理後
【PAN設定】
PANはセンターです。
スネアもバスドラム、ベースと並んで曲の重心を担う場合が多く、センター定位にするのが一般的です。
【ボリューム設定】
オートメーションでボリュームを変動させて、曲中の音量感が聴感上で一定になるように調整しています。
※オートメーションについては後述します


3−5.タンバリン
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タンバリンは録ったままの音でも特に問題は無かったですが、何も手をつけないのもつまらないので実験的に深くエフェクトを掛けてみました。調整前後を比較してみましょう。
タンバリン
調整前
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タンバリン
調整後
「チャ、ッ、チャ、ッ、チャ、ッ」というリズムパターンが「チャーツ、チャーツ、チャーツ」という風に変わる位まで深くエフェクト処理をしているのが分かると思います。
リバーブ
-11dB
【GranComp設定】
1段目のGraCompは、タンバリンの余韻を伸ばすために使用しています。
表の様に「アタック遅く、リリース早く」という設定で、非常に高いRATIOで常に圧縮が掛かるようにTHRESHOLDを下げて、COMPを掛けてみましょう。
COMP処理後
RATIO 40:1 THRESHOLD -46.0dB
ATTACK 60ms OUTPUT 2.0dB
RELEASE 5ms OUT CELING 0.0dB
MAXX(音量自動補正) ON 他パラメーター 適宜
調整前は小さかった「八分音符の裏拍」の音量が上がり、音の余韻も伸びてつながって聴こえるようになりました。
【IIEQalt設定】
2段目のIIEQaltは、余分な低音のカットのために使用しています。
深くCOMPを掛けたことにより、タンバリンを叩いた瞬間の「ボッ」という低音も大きくなります。今回は鈴の音だけ聴こえれば良いので、360Hz以下の低音をザックリとカットします。
センター周波数 EQタイプ Q ゲイン
364Hz シェルビング 0.50 -20.0dB
EQ処理後
モニター環境によっては効果が分かりにくいかも知れませんが、確実に低音は減っています。
余分な低音は他の音と重なった時に思わぬ悪影響を与える場合があり、良く聴き取れないだけに厄介です。不要な低音のカットを習慣化しておくと、この問題を回避できます。
【リバーブ設定】
音がつながった感じを更にプラスするため、センド量-11dBで深く残響を加えています。
リバーブ処理後
【PAN設定】
PANはL50です。お好みで設定して問題ありません。
【ボリューム設定】
ドラムになじむ程度の音量にしてあります。
3−6.ベース
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ベースは録音したままの音で特に問題がありませんでしたので、完全にノーエフェクトでボリューム調整のみ行っています。
ベース
リバーブ
なし
【リバーブ設定】
ノーリバーブです。
【PAN設定】
PANはセンターです。
ベース、スネア、バスドラムは、曲の重心を担う場合が多いためセンター定位にするのが一般的です。
【ボリューム設定】
オートメーションでボリュームを変動させて、要所でフレーズを目立たせています。
※オートメーションについては後述します
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