1.はじめに
1−1.サンプル曲 「時はウラハラ」
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レコーディングの方法は音楽性・楽器編成・求める音によりケースバイケースであり、全てのケースを想定して作業方法を解説をする事は到底不可能です。
本講座は「サンプル曲をどうやって作ったか」 を解説する形式にしますので、ご自身のスタイルに応用できる事柄だけを参考にしていただければ宜しいかと思います。
それでは早速、本講座の教材となるサンプル曲 「時はウラハラ」 の完成ミックスを聴いてみましょう。
※非圧縮で聴きたい方はWAVファイルをダウンロードしてください
完成ミックス
「時はウラハラ」
フルバージョン
「時はウラハラ」
カラオケバージョン
シンプルな構成・メロディーのロックナンバーですね。使用楽器はドラム、エレキベース、エレキギター、アコースティックギター、キーボード、タンバリンです。
後述しますが、今回は限られた条件で制作していますのでハイファイな音質とは言えませんが、自主制作では十分なレベルではないでしょうか。
1−2.特別な機材は使わない
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サンプル曲は、あえて業務用の機材を使用せずに下記の限られた条件で制作しています。
条件2
マイクはSHURE SM58しか使用しない
条件3
無料で入手できるプラグインエフェクトしか使用しない
「SHURE SM58」 はどこのスタジオでもレンタルできると思いますので、「入力4チャンネル以上のオーディオインターフェース」 を入手すれば誰でも真似できる制作環境ではないでしょうか。
実際に使用したDAWはSteinberg Cubase 6 、オーディオインターフェースはSteinberg MR816csx です。これらは比較的高価な機材ですが、高度な機能は一切使用していませんので入門クラスの機材で代用可能です。
以下からはレコーディング方法の解説をしていきます。
ミキシング方法だけを読みたい方はこちら >>ミキシング編
2.レコーディング編
※レコーディング編のサウンドサンプルは音量上げ処理を行なっていませんので、スピーカーのボリュームを上げて試聴して下さい。
※レコーディング編のサウンドサンプルは全てノーエフェクトです。
※タンバリンとキーボードについては録音は簡単ですので説明を省略します。
2−1.ドラムの録音
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ドラムは録音が難しく、皆さんの関心も高いと思いますので、特に詳しく説明したいと思います。
今回は「同時録音は4トラックまで」 という条件がありますので、ギターやベースとの同時録音はあきらめて、クリックを聴きながらドラム単独で録音します。
使用したドラムセットは、スネア・バスドラム・ハイタム・フロアタム・ハイハット・ライド・16'クラッシュ、18'クラッシュで、一般的に言う1タム1フロアのセットです。
<使用したドラムセット>
「同時録音は4トラックまで」 ということは、各パーツにマイクを立ててバラで録音する事はできません。
そこで、下の写真の様にオーバヘッドハイハット側 ・オーバーベッドライド側 ・スネア ・バスドラム に計4本のマイクを立てて4トラックで収録する事にしました。
もちろんマイクは4本ともSM58です。
<4本のマイクの配置>
複数のマイクを立てる場合、どのマイクでどのパーツの音を狙うかを決めておく事が大切です。
今回は下表の様にマイクの狙いを決めました。
<マイクの狙い>
マイク
狙い
オーバーヘッド ハイハット側
ハイハット、16'クラッシュ、ハイタム
オーバーヘッド ライド側
ライド、18'クラッシュ、フロアタム
スネア
スネア
バスドラム
バスドラム
スネアとバスドラム以外はオーバーヘッドの2本で全部カバーする作戦です。
このセッティングでどんな音で録れるか、4本のマイクをラフにミックスしてノーエフェクトで聴いてみましょう。
オーバーヘッドの2本はPANを左右に振り、スネアとバスドラムはセンター定位で、適当に音量バランスをとります。
なかなか良い感じではないでしょうか。演奏とセッティングが上手くいっていれば、マイク4本でノーエフェクトでもバランス良く聴こえるものなのですね。
それでは、各マイクのセッティングを詳しく見ていきます。
オーバーヘッド
<オーバーヘッドのマイクセッティング>
※マウスオーバーで録音イメージを表示
マイク2本でシンバル・タム全部を録音したいので、下記の様にマイクを設置してドラムセット全体を狙います。
[高さ]クラッシュシンバル上面から約70cm [2本の間隔]約50cm [マイクの向き]真下
この数値はそれ程シビアではなく、数センチずれた位では音に違いは出ないと思います。
ステレオでバランス良く音を録るには、この様に左右対称にマイクを設置すると良いです。
それでは、この2本のマイクでどんな音が録れるか聴いてみましょう。
PANはハイハット側マイクを左、ライド側マイクを右に振ってあります。
「あれ?シンバル・タムだけでなく、狙ってないスネアやバスドラも録れてない?」
と、思うかも知れませんが、シンバルとタムがしっかりと録れていれば、この程度スネアやバスドラムがかぶっていても問題ありません。
<オーバーヘッドのポイント>
●
シンバル・タムが同じ位の音量で録れているのが理想です。「シンバルが大きくてタムが聴こえない状態」やその逆の状態はNGです。
●
スネアやバスドラムが大きくかぶって録れていても問題ありません。
●
マイク位置を低くしてクラッシュシンバルに近付けると、シンバルは大きく録れますが、相対的にタムは小さく録れます。
●
2本のマイク間隔を大きく広げるほど、16'クラッシュ/18'クラッシュとハイタム/フロアタムの音の分離は良くなり、左右定位もはっきりします。
反面、センター定位の音量が小さくなるため、ドラムセット全体としての迫力と一体感が薄くなる事があります。
バスドラム
<バスドラムのマイクセッティング>
バスドラム以外の音のかぶりを減らすため、マイクの頭をバスドラムの中に10cm くらい突っ込んで打面側ヘッドを狙っています。
この写真では打面側ヘッドの中央付近を狙っていますが、この狙いが多少ずれても音にそれ程の変化はありません。
では、録れた音を聴いてみましょう 。
バスドラムの音が大きく、他の音のかぶりが小さく録れていますね。
若干低音が物足りない感じもしますが、低音用のマイクではないので仕方ないところでしょう。
バスドラムのトラックは「バスドラムだけが大きく録れ、かぶりが小さい状態」 が理想です。この位のかぶりならOKです。
<バスドラムのポイント>
●
バスドラムだけが大きく録れているのが理想です。他のかぶりが大きいのはNGです。
●
マイクをバスドラムの中に突っ込むと、かぶりが小さくなります。マイクを外に出すとかぶりが大きくなります。
●
マイクを極端に突っ込むと、セットの外側で聴く音とは全然イメージの違う音で録れる事が多いです。
かぶりが少なく、かつイメージ通りの音になるポイントを探しましょう。
●
かぶりを極力減らしたい場合、フロントヘッドとマイクを丸ごと毛布等で覆ってしまうのも効果的です。
スネア
<スネアのマイクセッティング>
※マウスオーバーで録音イメージを表示
マイクはスネア打面から高さ約5cm 、マイクの頭がリムに掛かるくらいの位置 にセットして、斜め下へ向けてヘッド中央 を狙っています。
スネアの録音では「ハイハットのかぶりをいかに減らすか」 が重要なポイントです。スネアのトラックにハイハットが大きくかぶっていると
後々ミキシングでスネアの音量を上げた時にハイハットも同時に上がってしまうため、バランスをとるのに非常に苦労します。
写真の様にマイクをハイハットに向けない様にして、出来る限りスネアに近づけるとのかぶりを軽減できます。では、録れた音を聴いてみましょう 。
スネアの音が大きく、他の音のかぶりが小さく録れていますね。
スネアのトラックもバスドラムと同じで、「スネアだけが大きく録れ、かぶりが小さい状態」 が理想です。このくらいのかぶりであれば問題ないです。
かぶりがどうしても小さくならない場合、かぶり軽減用のマイクカバーが市販されていますので、それを使うのも良いでしょう。
(このカバーは構造が単純なので身近な材料で自作可能です)
<スネアのポイント>
●
スネアだけが大きく録れているのが理想です。ハイハットのかぶりが大きいとミックスの際に苦労します。
●
マイクをスネアに極力近付ける様にすると、かぶりを軽減できます。
ドラムでよくある問題
「ドラムの音の良し悪しは、録音の段階で7-8割は決まる!」 ...これまでの経験からそう感じます。
ドラムに限った話ではありませんが、「ミキシングでどうにかなる」と思わずに、録音の段階で妥協せずにサウンドを追い込む事が非常に大切です。
以下にドラムの録音でよくある問題と対策をまとめましたので参照下さい。
読んで頂ければ分かりますが、思うようなドラムサウンドにならない場合の原因はプレイヤー側の問題 である事がとても多いです。
ドラムはエレキギター等と違って、音のコントロールに電気的なアシストが一切使えないので、ドラマーは大変なプレッシャーの中で演奏しているのですね。
問題点
考えられる原因
改善方法
スネアの音抜けが悪い
・ショットが弱い
・強く叩く
スネアの音が「ポコン」「ポヨン」としかならない場合、ショットが弱くアタックが出ていない事が原因です。この状態はドラム初心者に多いです。
また、強くショットしているのに「ボスン」という感じで抜けが悪い場合、ヘッドの張りが極端に弱くピッチが低過ぎる事が原因の場合が多いです。
・ピッチが極端に低い
・ヘッドをもっと張る
・ミュートし過ぎ
・ミュートを減らす
・マイクが遠い
・マイクを近づける
バスドラムの音抜けが悪い
・キックが弱い
・強く踏む
ビーターの当たりが弱いと「トン」という軽い音となり、「ドン」「デン」という重い感じにならず、音も前に出て来ません。
・ミュートし過ぎ
・ミュートを減らす
・マイクが遠い
・マイクを近づける
バスドラムのアタック音が
聴こえない
・キックが弱い
・強く踏む
ハードな音楽では「ベチッ」「ドチッ」というアタックが重要視されますが、この音は踏み込みが弱い人にはどうやっても出せません。まずは演奏力を鍛える事が第一です。その上で、パッドやビーターを工夫しましょう。
打面のヘッドを緩めにすると、ビーターが当たってヘッドが張り切る時の衝撃音が良い感じのアタックになります。
・他
・ヘッドを緩める
・打面にパッドを貼る
・ビーター材質を変更する
クラッシュシンバルの
音量が小さい
・ショットが弱い
・強く叩く
大抵の原因はショットが弱いことです。意識して強く叩きましょう。
・マイクが遠い
・マイクを近づける
クラッシュシンバルの
左右の音量バランスが悪い
・ショットの力加減が悪い
・力加減を調整する
大抵の原因はショットの力加減がバラバラである事です。どうしてもバランスよく叩けない場合は、音量が小さい方のマイクだけを近づける、大きい方のマイクだけを遠ざける、という方法もありますが、クラッシュ以外の音のバランスが崩れるのであまりお薦めしません。
・マイク位置が悪い
・マイクを離す/近付ける
ビビリ音のノイズが入る
・ボルト類の緩み
・締める
ラグボルトを数本緩めるセッティングの方も、グラグラしない程度までは締めましょう。スネア-タム、タム-バスドラムが接触しているとビビリ音が出る事があるので、ほんの少しで良いので隙間を開けるか布などを挟みましょう。
・太鼓同士が接触している
・接触しないようにする
音がプレイヤーの
イメージと違う
・音を聴く位置の違い
・セットの外側で音を聴く
「録音した音」に慣れていないのが原因です。「着座位置の生音」と「録音した音」は違いますので、録音のプレイバックを基準にチューニングする、誰かにドラムを叩いてもらってドラムセットの外側で音を聴く、などの方法で客観的にドラムの音を判断すると良いです。
2−2.エレキベースの録音
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エレキベースの録音方法は、「アンプの出音をマイクで録音する方法」 と「ダイレクトボックスでライン録音する方法」 の二つがあります。
いずれの方法でも、録音は技術的にそれほど難しくありません。その分、プレイヤーの音作りのセンスと演奏技術にすべてが掛かっていると言えるでしょう。
今回のサンプル曲では、自宅で録音する事を想定してアンプは使わずにライン録音を行ないました。
<ベース使用機材>
<SANSAMPのセッティング>
エフェクター兼ダイレクトボックスとしてSANSAMP BASS DRIVER DI を使用し、軽く歪ませて音量のばらつきを抑えています。
楽器の音作りについては、エンジニアよりプレイヤーの方が詳しいと思いますので、ここでは詳しい説明は割愛します。
録音技術的には、ライン録音の場合は「モニター音≒録れる音」ですので特に難しいことは無いでしょう。
また、エレキベースはプラグインのアンプシミュレーター等を使用して後から音を作りこむ事が可能ですが、あまりにも癖の強い音で録音してしまうと
後々それが邪魔になる場合があります。後処理で音を作る事を前提に録音する場合は、過剰なイコライジングやエフェクトは避けて出来るだけ
フラットで癖の無い音で録音すると良いです。
<エレキベースのポイント>
●
録音はそれほど難しくないので、音作りと演奏に注力しましょう。
●
後処理で音を作りこみたい場合は、録音段階では癖の無いフラットな音で録っておきましょう。
2−3.エレキギターの録音
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かつてはエレキギターはアンプにマイクを立てて録音するのが普通でしたが、最近はアンプシミュレーターの普及によりライン録音も一般的になりました。
エレキベース同様、録音はそれほど難しくありません。プレイヤーが良い演奏をする事、良い音を出す事が何よりも大切です。
今回のサンプル曲ではアンプを使わずに、お手軽にアンプシミュレータを使用してライン録音を行ないました。
<エレキギター使用機材>
<PODのセッティングの一例>
アンプシミュレーターは LINE6 POD xt を使用しました。サンプル曲ではエレキギターは音色を4つ使用しています。1つずつ聴いてみましょう
Line6のオリジナルアンプの音色。バッキングに使用。
ギター1の中域を少し上げた音色。サビのシーケンスフレーズに使用。
Soldano SLO-100をシミュレートした音色。バッキングに使用。
ギター3に薄くディレイをかけた音色。オブリ・ソロに使用。
今回の様なライン録音の場合は、ベースと同様に「モニター音≒録れる音」ですので、録音技術的に難しいことは無いと思います。
今回は行いませんでしたが、エレキギターをマイクで録音する場合は「出音を耳で聴いて良い音で聴こえる場所にマイクを立てる」というのがコツだと思います。
一般的には、スピーカー正面に近い距離でマイクを立てる事が多いですが、自分のイメージどおりの音が録れればマイク位置はどこでも良いと思います。
常識にとらわれず、楽しみながら色々実験してみてください。
<エレキギターのポイント>
●
録音はそれほど難しくないので、音作りと演奏に注力しましょう。
2−4.アコースティックギターの録音
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曲のエンディングにちょっとしか登場しませんが、ピエゾピックアップの付いたアコギを使用して一応ちゃんとマイクとラインの2トラックを同時録音しました。
最終的にミックスの際にはマイク・ライン両方を使用しています。
<アコースティックギター使用機材>
<アコースティックギターのセッティング>
ボディとネックのつなぎ目付近 を狙ってSM58を1本立てています。ギターとマイクの距離は15cm 位です。マイクの音を聴いてみましょう。
しっかりした厚みのある音で録れています。弦が古かったため 高域のきらびやかな感じが不足していますが、まあ良しとしましょう。
次にラインの音も聴いてましょう。ダイレクトボックス はCOUNTRYMAN TYPE85 を使用しました。
マイクの音とキャラクターが異なっており、中域が目立つ音ですね。
さて、アコギをマイク録音する場合はマイクの位置が非常に重要となります。一般的な傾向として、
●サウンドホール付近では低音が強調される ●ブリッジ付近では高音が強調される
●ネック付近では高音・低音のバランスが取れた音になる ●マイクを近付けると低音が強調される
という事が言えますが、楽器の個体差や弾き方によってサウンドが全然違ってくるため、何度も試し録りして好みの音で録れるマイク位置を探すのが一番です。
チャンネル数に余裕があれば複数のマイク立てて、それらをミックスして使用するのも良いでしょう。
また、弦が古いと今回の様にこもり気味な音になります。きらびやかな音が欲しい場合は新品の弦を使いましょう。
アコギの録音で良くあるのが「左手のポジションチェンジの際のキュッキュッ音が大きい」 という問題です。
これは、マイク位置など録音側の調整ではほぼ解決できません。運指に注意する、コーティング弦を使用する等、プレイヤー側での対策が必要です。
<アコースティックギターのポイント>
●
サウンドは楽器やプレイヤーにより大きく違うので、根気良くベストポジションを探しましょう。
●
複数のマイクを立てるのも効果的です。ただし、ギターとマイクの距離を揃えるなどして、マイク相互の位相ズレに気をつけましょう。
●
弦の古い/新しいでサウンドは大きく変わります。
●
フィンガリングノイズはプレイヤー側で対策しましょう。
2−5.ボーカルの録音
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楽曲の命とも言える歌の録音です。
マイクセッティングは、固定/手持ちのどちらでもマイクに向かって歌うだけなので非常に簡単です。
しかし、歌を安定した音量で録音するのは簡単ではなく、作業時に最も神経を使うパートの一つと言えます。
サンプル曲ではSM58を使用して、歌詞1-2行ごとに細かく区切って、ベストテイクをつなぎ合わせるスタイルで録音しました。
単体のマイクプリアンプやコンプレッサーは使用せず、マイクをオーディオインターフェイスに直結しています。
<ボーカル使用機材>
<ベストテイクをつなぎ合わせる>
ボーカルの録音においてもっとも難しいのは、「高音の部分は良いけど、低音の部分の歌詞がモゴモゴしてよく聴こえない」 「母音がアの歌詞は良いけど、ウの歌詞だとパワーが無い」 など、曲の部分ごとに音量にバラつきが出てしまう点です。
この問題は、コンプレッサー等の音量を制御するエフェクターをインサートする事によりある程度の改善は可能ですが、根本的には歌い手の技術で解決する以外に方法はありません。 どんな高性能なマイクやアウトボードを使っても、モゴモゴ発声していたのでは良い歌は録れないのです。
対処法としては、DAWのパンチイン機能 をフル活用して、部分毎に細かく分けて録音して、上手くいくまで繰り返して歌うが最も効率の良い方法と思います。
この方法は歌唱に問題がある箇所だけを集中して録り直す事ができるため、歌い手のプレッシャーや疲労を軽減できて良い結果になる事が多いです。
ボーカルでよくある問題
以下にボーカル録音時によくある問題と対策をまとめましたので参考にして下さい。
問題点
考えられる原因
対処方法
音量のバラつきが大きい
・発声が不安定
・上手くいくまで録り直す
結局はこれに尽きます 。
・コンプレッサーを使用
もし持っているならコンプレッサーなどで音量を整えると多少改善します。
・マイクとの距離が一定でない
・立ち位置をバミる
歌う際の立ち位置を足元にテープでマーキングすると良いです。
口を開閉する際の
ペチャ・クチャ音が大きい
(=リップノイズ)
・歌い手のクセ
・上手くいくまで録り直す
口腔の形状や長年のクセによるものですので、すぐに改善するのは無理です。何度も録り直して、ノイズが少ないテイクを選ぶ様にしましょう。唾液の量も関係すると思いますので、水分補給等で口内のコンディションを変えてみるのも良いと思います。
「ボッ」「ボー」という
風の音が大きく録れてしまう
(=ポップノイズ、吹かれ)
・歌い手のクセ
・上手くいくまで録り直す
SM58などボーカルマイクの多くには、吹かれ対策としてグリル内部に風よけのスポンジが入っていますが、それでも吹かれが気になる時は市販のポップガードを使用すると良いです。また、マイクに対して斜めに立ち、吐息がマイク正面から直撃しない様にすると問題が改善する場合があります。
・ポップガードを使用する
・ マイク正面を外す
録音を続けていると
歌っている音程の正誤が
分からなくなってくる
・モニター音量が大きすぎる
・モニター音量を下げる
長時間大音量で音を聴くと音程感・リズム感が乱れてきます。あまり連続で作業せずに適度に休憩やストレッチをしましょう。ヘッドフォンのモニターを大きくし過ぎると、疲労が早くなるので適度なモニター音量を心がけましょう。
・疲労
・適度に休憩する
録音した声が歌い手自身の
イメージと違う
・自分の声を聴き慣れていない
・慣れるまで録音を続ける
「録音した自分の声」に慣れていないのが原因です。こればかりは経験を積む以外に方法はありません。とはいえ、歌唱の良し悪しを自分で客観的に判断するのは難しいものです。信頼できる第三者にディレクションしてもらうのが有効です。
・第三者に監督してもらう
2−6.コーラスの録音
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コーラスの録音セッティングは、リードボーカルと同じです。
今回は同じメロディを複数回重ねて録音して厚みを出す 方法をとっていますので、ここではその説明をします。
Bメロの「気付いたー」のコーラスは声を2本重ねています。まずは1本だけで聴いてみましょう。
これに同じメロディをもう一度歌って重ねます。
同じメロディを重ねるとこのような不思議な浮遊感と厚みのある音色になります。
これは、エフェクターの「コーラス」と同様の原理・効果です。
(そもそも「コーラス」エフェクターはこの多重録音を再現する機材なので当然ですね)
この効果は相互のトラックのピッチとタイミングの微妙なズレにより生み出されますので、
同じテイクを別トラックにコピー&ペーストして重ねても効果は出ません。
サビの「いつだって時はウラハラ〜」のコーラスは、3声を各3本重ねて計9人の合唱にしています。
まずは下パートを1本だけ聴いてみましょう。
これに厚みを加えるために、もう2回歌って重ねると...
こんな感じになります。だいぶ分厚くなりましたね。
更に上パート、中パートも同様に各3本重ねます。
それでは、3声×3本全部で聴いてみましょう。
かなり豪華なコーラスパートが完成しました。
以上の様に、声を複数回重ねる方法は手軽に音に厚みを出すことが出来るので、派手なコーラスパートを作りたい時には大変有効な手段です。
2−7.レコーディングで良くある質問
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レコーディングについて質問されることが多い事柄をQ&A形式で列記します。
Q.
D,B,G,V編成のバンドですが、どの順番で楽器を録っていけば良いですか? ドラムを最初に録らないとだめですか? ギターが最初ではだめですか?
A.
どのパートから録音を始めても大丈夫です。ご自分がやり易ければギターや歌を最初に録音しても問題ないと思います。
ただし、リズムトラックを後から録音する場合は相当正確なリズム感が要求されますので、自信が無い方はドラムから録り始めた方が圧倒的に楽です。
Q.
録音レベルはどの位が良いでしょうか?
A.
全楽器共通で、ピーク(=録音波形の頂点)が-6dB程度 の録音レベルが良いと思います。
録音レベルは、小さ過ぎると後でミキシングでレベルを上げた時に「サー」というノイズが目立ったり、解像度の低い粗い音になってしまう事があるので出来るだけ大きい方が望ましいのですが、大き過ぎて0dBを超えると音が割れて修復不能なノイズになってしまいます。セーフティマージンを取って-6dB程度で良いと思います。
Q.
音色や演奏の良し悪しは、モニタースピーカーで判断するべきか? ヘッドフォンで判断するべきか?
A.
どちらか片方と言わず、スピーカーとヘッドフォン両方でチェックして、どちらで聴いても問題ない事を確認すれば良いと思います。ただし、PC内蔵のスピーカー、ラジオ用イヤホンなど、再生レンジが極端に狭く低音が出ないものは避けましょう。
Q.
録音時にモニターのヘッドフォンの音漏れが気になるのですが、これを防ぐ良い方法はありますか?
A.
まず、ヘッドフォンの音量が大き過ぎませんか? 可能な限り音量を下げましょう。
それでも気になる場合、ヘッドフォンを装着した上からタオルなどをハチマキ状に頭に巻いて(ラーメン屋さんの要領です)、ヘッドフォンをカバーすると同時に頭とヘッドフォンを密着させる事で音漏れを減少させる事ができます。また、インナーイヤー型のイヤホンを使うのもおすすめです。
Q.
ボーカル録音時、モニターのヘッドフォンの自分の声に違和感があり歌いにくいのですが?
A.
ヘッドフォンを片耳外して、生声を聴きながら歌ってみると違和感が無くなる事があります。
Q.
ボーカル録音時、リラックスするコツはありますか?
A.
座って歌うのはどうでしょうか?
「パワーのある歌=立って踏ん張って歌う」というイメージがありますが、座って歌った方が無駄な力が抜けて良い声が出る方も多い様です。先入観に囚われず、ベストな姿勢をあれこれ試してみると良いのではないでしょうか。
Q.
ベースの録音。アンプの出音は良い感じなのに、マイクで録ったら低音が足りない。
A.
まず、お使いのモニタースピーカー、ヘッドフォンは低音がきちんと出るタイプでしょうか?
「低音が出ないモニターで作業して、いざ他のモニターで聞いてみたら低音が膨らみ過ぎだった」というのは結構ありがちなミスです。そのモニターでお気に入りのCDを聴いてみて低音がきちんと出る事を確認しましょう。PC付属の小型スピーカーなどは低音が出ないものが多いです。
モニター正常を確認したら、アンプの出音ではなくモニターからのプレイバックを基準にアンプの出音を調整しましょう。
Q.
エレキギターをマイク録音する時、アンプの音量はどの位にすれば良いですか?
A.
アンプの用途にあった音量にするのが良いと思います。大きなアンプは大音量、小さなアンプは小音量にするのがおすすめです。
Roland JC-120やMarshallのスタックアンプ等はステージでの使用を想定して作られていますから、大音量で鳴らした時に良い音がするはずです。逆に15W程度の練習用アンプは、小音量で良い音が出るように作られているはずです。
しかし、これはあくまで一般論であって、良い音が出ればどんな音量でも構わないのではないでしょうか。そのアンプが「一番良い音で鳴る音量」を根気強く探し出しましょう。
以上でレコーディング編は終わりです。
次は録った素材をミキシングして曲を完成させましょう。 >>次ページ