レコーディング
 リハーサル
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【実験13】 サイレントボックスを自作してみる。
正式に何と言うのかは分かりませんが、、、
サイレントボックスというものをご存知でしょうか?
最近、市販品で見るようになったのですが。


スピーカーユニットとマイクを1つの箱に収めて密閉するレコーディング用のボックスです。
自宅などでもアンプのサウンドが録音できる。」というのがウリの1つみたいですが、、、
音が外に漏れないということは、逆に外の音が中に入らないという事!!
うちのスタジオにとっては、

一発録りの時に非常に便利!!

な訳です。

当スタジオは『個別にブースがあって・・・』などというスタジオではないので、
(リハーサルルームでレコーディングします。)
一発録りでアンプ使用の場合はどうしても音がかぶります。(他のパートの音までマイクで拾ってしまいます。)
『一体感がでる!』とあえてそう録音するお客様も中にはおりますが、『後加工が大変になる』ことや、
音の分離を良く、且つ一発で録音したい!』というお客様もいるわけです。
そう、これはそんなお客様にもってこいの商品なわけです。

そんな訳で、是非とも手に入れたい商品なのですが、、

      A:『ん〜〜、これ欲しい!!』
      B:『いくら?』

      A:『約10万。』
      B:『高いな〜!』

      A:『・・・。』
      A:『・・・もっと安い店探してみるか。』
      A:『6〜7万で買えるけど。』
      B:『却ッ下!!』

      A:『・・・。』


はい、はい。

ってな訳で、自作することになりました。

今までは、『実験野郎』という名の通り、実験してみる・作ってみる。
という感じでしたが、今回は違います。切実にスタジオに必要だと思うので
本気の自作です。
(もちろん今までも本気でしたが・・)

実験!自作!「サイレントボックスを自作できるか?」。がんばります。



市販品を使用した感想などを色々見てみましたが、どうしても音は漏れるようです。
  完璧に無音になることはないようですので、購入するときは誤解のないようお気をつけ下さい。

  自作する側にとっても「音モレはしょうがないのか」と心にゆとりがでます。



<目標>サイレントボックスを安く自作する
(音モレはしょうがなし!)


1.材料
自作に必要な素材(部品)リストアップ
必要素材 仕様
スピーカーユニット 8オーム or 16オーム 入力50W位 (ちなみにISO 12Cは 8オーム60W)
ケース用木材 なるべく安くしたいので、ラワンベニヤを使用。
厚さは12mm。
(厚ければあついほど遮音性はあがるが、後から加工することを考えるとこれ位が妥当かな、、。
 コンパネなどでも使われている一般的な厚さだし。)
マイク スタジオにあるものを使用
マイクホルダー スタジオにあるものを使用
グースネック ケースの大きさ次第。20cm〜30cm位。 要購入
マイクケーブル スタジオにあるものを使用
ジャック フォン、XLR 要購入
スピーカーケーブル スタジオにあるものを使用
レザーシート 最終的に木材の上に貼るもの。
カッティングシートなどで十分だと思うけど、<カッコヨク頼むよ>と注文が入ったので
見た目よく黒のレザーを使います。
シリコン 密閉性を高めるためにあらゆる隙間をシリコンで埋めます。
(本来こういう使い方ではないかもしれません。)
吸音材 スタジオにあるものだけでは足りないので購入が必要なのですが、、
吸音材って結構なお値段がするので、タオルなどの布類を代用品とします。
金具 何というのか分かりませんが、ギュっとふたを取り付けつための金具。
頑丈なもの。
その他消耗品など ネジやクギ、ボンドなど必要に応じて


自作に必要な素材(部品)購入・調達
スピーカーユニット YAHOOオークションにてアンプのジャンク品を購入。



Guyatone製 ベースアンプ 480B 最大50W
(2流3流メーカーなどという輩もおりますが、知っている人は知っている。
 好きな人にはたまらないアンプ。)

新品だとスピーカーユニットだけで結構な値がつくので、
ガワ(木材の箱)まで一緒についてて
ジャンク品の安いベースアンプを選定しました。
ただし、スピーカーが使えないと何の意味もないので、
ジャンクでもスピーカーがいきているものが絶対条件
最近は、使用には問題がなくてもガリや見た目の劣化を理由にジャンク扱いで
安く出品されている商品があるので、そうゆうのを手に入れましょう。
(いや、別に作る必要は無いんですが、、。)


購入後ベースをつないでチェックしてみたら、ガリがひどいだけでスピーカー自体は問題なし。

!?

そう、アンプまでも使えるのでこいつはおいしい。
アンプ部分だけとっておいて、今回の自作が終わったら
ヘッドを別に作ることにします。







ケース用木材
ケース用木材 ケース用の木材ですが、、
アンプを購入したので、
アンプのケースをそのまま使用します。
が、まだケース用の木材が足りません。
マイクを取り付けてフタにする部分を作らなくてはなりません。

が、、大きさや配線、密閉性(音モレ)を考えてから購入しましょう。
大きな板を買ってノコギリで切り出すのは、今回はさすがに無理です。
密閉性を高めるには寸法精度が重要です。
グニャグニャに曲がって切った板をはり合わせても隙間が空いて
音が駄々モレです。

今回は通販で4尺×8尺のベニヤ(1200mm×2400mm)を
指定の寸法にカット販売してくれるサイトを利用します。

もしベニヤを買う機会があるようでしたらこちらをどうぞ→
田木屋商店


では、、アンプの寸法を測ってレイアウトを考えて見ましょう。



上の画像ではよく分からないと思いますが、2重構造にしました。
マイクはかなりオンマイクです。
実際、一発録りでかぶりを少なくしようとしたらオフマイクにはしないので
まぁ、これでいいでしょう。
市販品のもオンマイク仕様のようだし。


ジャックの穴や、ケーブルを通す穴などの加工は必要ですが、
欲しい寸法ズバリで木材が届くので、かなり便利です。


あと、、
アンプの裏側が、ベースアンプには珍しくオープンでした。
ここも塞いであげないとダメですね。。
ここはスタジオに少々余っている木材で何とかしてみます。
まぁ、アンプ部分を取り外した所の後処理もあるので実際作りながらじゃないと
なんともいえませんが、、。




夜に注文して・・・
翌日注文受付の連絡があり・・・
3日目には木材が到着しました。(素早い! 、、、でかい。)

マイクホルダー スタジオに余っていたもの
グースネック 購入しました
マイクケーブル スタジオに余っていたもの
ジャック類 購入しました
スピーカーケーブル スタジオに余っていたもの
シリコン 購入しました。
レザーシート 購入しました。

それと、壊れているイスがあったので、座る部分のレザーを使いました。

吸音材 スタジオに余っていた吸音材 (どう見ても掃除機で吸取ったホコリの塊にしか見えないのは私だけでしょうか?)

それと、余っていたタオルなどの布類 (
実際は大量に使用しました。)

一応見栄えを良くするためにフェルトを購入
金具 購入しました
その他 ボンドやクギ、ネジなどを購入、L字のアルミ板やゴムなどはスタジオに余っていたものを使用
  


2.加工
スタジオの空時間にコツコツと作ったので、製作には2ヶ月程かかりました。
簡単に説明するとこんな感じです。
ベースアンプの加工
   ↓
2重蓋(箱)の作成
   ↓
吸音加工
   ↓←←←←←←←←
テスト(音出し)> (不具合がなくなるまで繰り返す)
   ↓
不具合対策
   ↓→→→→→→→→
外装仕上げ
   ↓
  完成


※テスト前までの加工詳細はこちら → 加工詳細
※不具合対策の加工詳細はこちら → 不具合対策
※外装仕上げの詳細はこちら → 外装仕上げ


3.評価
ビビリ音が発生しなくなった所で、サイレントボックスの性能を確認したいと思います。

以下、3種類の方法でサウンドを録音し、性能を評価します。

(この結果によって、実用できるかどうかが決まるのでドキドキです。)

<評価 #1>
サイレントボックス、せっかく作ったはいいが、音が駄々モレでは意味がないので、
ある程度、音を遮断できるのかどうかを確認します。

 ギター単体での評価 < 音モレ具合の確認 >

評価方法

蓋をしない状態のサウンドと、蓋をした時のサウンドを録音、音量の差がどの程度になるかを確認します。

<フタ無しで録音> <フタ有りで録音>
<録音詳細>
アンプ
 JCM800を使用。
ギター    ピックアップ:
リア ヴォリューム:全開 トーン:全開
JCM800  INPUT:
HIGH PRESENCE:5 BASS:5 MIDDLE:5 TREBLE:5 MASTER:1-4 PREAMP:10

MASTERボリュームをメモリ1づつ増やし4回録音(メモリ1〜4)




録音結果

<音で確認>
 フタ無しで録音  MP3ファイル
 フタ有りで録音  MP3ファイル


<波形で確認>
左側4つがフタ無しで録音した場合の波形です。
メモリを1づつ増やし4回録音したので、波形が大きくなっていってます。

右側4つがフタ有りで録音した場合の波形です。
こちらも、メモリを1づつ増やし4回録音したので、波形が大きくなっていってます。





評価結果

 ギター単体での評価 < 音モレ具合の確認 >

どうでしょう!?
これだけ遮音できているので、
音モレ具合の評価は
『合格でいいのではないでしょうか?

・・・

まぁ、どっちみち、合否を出すのも自分なんですが、、

(疑問文にするから〜、、ややこしいことに)

まぁ、OKとしましょう。






<評価 #2>
遮音効果が確認させたところで、内部のサウンドに耳を傾けてみます。
密閉したことによってボックス内のサウンドが異常になるようでは、せっかく作った意味がないので、
サイレントボックス内のサウンドを録音し、サウンドに異常がないかを確認します。

 ギター単体での評価 < 内部サウンドの確認 >

評価方法

蓋をした状態で、予めセットされている内部マイクでサウンドを録音、サウンドに異常がないかを確認します。

<録音詳細>
 アンプ
 JCM800を使用。
 ギター    ピックアップ:
リア ヴォリューム:全開 トーン:全開
 内部マイク SM57を使用。
 JCM800  INPUT:
HIGH PRESENCE:5 BASS:5 MIDDLE:5 TREBLE:5 MASTER:4 PREAMP:10




録音結果

<音で確認>
内部マイクで録音 → MP3ファイル




評価結果

 ギター単体での評価 < 内部サウンドの確認 >

これもフタ有り/無しで録音すれば、サウンドの変化が確認できてよかったのですが、録音し忘れました。
なので、「フタをしても変化なし!」と、歯切れの良い合否は出せない訳ですが、、

音を聴く限りでは、問題なさそうですね。

内部サウンドの評価も『合格』でいいのではないでしょうか?

・・・

(だから疑問文にすんじゃねぇって!)

OK、OK!






<評価 #3>
最後に、、
実際のバンドレコーディングでサイレントボックスを使用し、ドラムの音が入り込むかを確認します。

 バンドでの評価 < 一発録りでのカブリの確認 >


評価方法
一発録りレコーディングで以下の2パターンを録音し、
サイレントボックス内のマイクにドラムの音がどれくらいカブって録音されるか確認します。

●録音パターン

パート 録音詳細
ドラム 一発録り - マイク10本使用
ベース 一発録り - ライン
ギター 一発録り - サイレントボックス/アンプ(TwinReverb II) 
ギターソロ 後録り
ヴォーカル 後録り
コーラス 後録り

●録音パターン2●
パート 録音詳細
ドラム 一発録り - マイク10本使用
ベース 一発録り - サイレントボックス/アンプ(YAMAHA B100)
ギター 一発録り - マイクにて録音/アンプ(TwinReverb II)
ギターソロ 後録り
ヴォーカル 後録り
コーラス 後録り

レコーディングバンド
今回の実験でレコーディングにご協力頂いたのは、こちらのバンド → 
『Little Elephant LABO』様です。
脱出ゲーム(Ast)や実験野郎-番外編などでもお世話になっている、東京スタジオではお馴染みのバンドです。
後程、今回録音した音源を紹介いたしますので是非ご試聴下さい!

<<録音風景>>

ついに実戦投入!

セッティング中


ドラムはあまり関係ないんですが、、
本気の録音です。(マイク10本使用!)


ベースでもサイレントボックスを評価!
今回の実験がうまくいけば、
レコーディングパターンの幅がかなり拡がります。


2曲目、パターンを変えセッティング中


2曲目、(パターン2)ではギターはマイク録音。
サイレントボックスと比較するのに最適。




録音結果

<音で確認> ・・・音量差にご注意下さい。
●録音パターン1● ●録音パターン2●
Gt:サイレントボックス内サウンド
ギター音1

(8.0M/WAV)
Gt:マイク録音サウンド
ギター音2

(8.7M/WAV)
B:ライン録音
ベース音1

(8.0M/WAV)
B:サイレントボックス内サウンド
ベース音2

(9.1M/WAV)
一発録りで録音したパートをミックス
カラオケ1

(16.2M/WAV)
一発録りで録音したパートをミックス
カラオケ2

(16.7M/WAV)




評価結果

 バンドでの評価 < 一発録りでのカブリの確認 >

さて、「ドラムの音がサイレントボックス内のマイクに入り込んでいるかどうか」ですが、、
ギター音1ギター音2 / ギター音2ベース音2を比べて聴くと分かるように、
かぶりはかなり少なく録音されることが分かりました。

ドラマーによってかぶりの差があるとは思いますが、サイレントボックスを使用した方が、
かぶりは確実に少なくなることでしょう。

サイレントボックス、、バンドでの評価
『合格でいいのではないでしょうか?

録音される音質に関しても、特に問題はないと思いますが、
もっと極端に歪んだギターや、ベースのイコライジングを変えてみるなど、、
色々やってみる必要があります。
何かクセがあるかもしれませんし、何の問題もないかもしれません。

まぁ、後は実際にレコーディングで使いながら様子をみるって感じですな。





<評価 #4>
性能には関係ありませんが、目標が「安く」ということだったので、幾らかかったか算出してみました。

使用部品 詳細 料金
スピーカーユニット ベースアンプ¥1000
送料¥1520
¥2,520-
ケース用木材 ベニヤ¥5820
送料¥1470
¥7,290-
マイク スタジオにあるものを使用 ¥0-
マイクホルダー スタジオにあるものを使用 ¥0-
グースネック グースネック¥1500
ベース台座¥700
¥2,200-
マイクケーブル スタジオにあるものを使用 ¥0-
ジャック フォン¥400
XLR¥240
送料¥525
¥1,165-
スピーカーケーブル スタジオにあるものを使用 ¥0-
レザーシート レザーシート+フェルト ¥4,093-
¥4,093-
シリコン シリコンコーキング剤2本 
¥298
¥365
 
¥663-
吸音材 あるもので代用
¥0-
金具 ¥367 × 6ヶ = ¥2,202-
¥242 × 2ヶ = ¥484-
¥2,686-
その他消耗品など ネジ¥105
クギ¥100+105
ボンド¥498
¥808-
合計 ¥21,425-

市販品に比べると、かなり安くできたのではないでしょうか?
(性能を比べると、どうなのだか分かりませんが、、。)

ただし、この値段でサイレントボックス以外にベースアンプのヘッドも入手しています。
消耗品(木材、ネジ、クギ、ボンド、シリコン、レザー)に関しては、
全て使い切ってるわけではないので、残りは在庫としてストックになります。

そう考えると、今回は「格安」まではいきませんが、
「まぁ、まぁ、悪くない価格」で作ることができたのではないでしょうか?






4.まとめ
おめでとうございます。ありがとうございます。
サイレントボックス完成しました。

アンプのヴォリュームをフルテン(全てのツマミをMAX)にしてもビビルことなく
横の人と普通に会話することができるくらいの音モレで済みます。


<実験結果> 成功 (安く、自作することができました。)
<感想> 「欲しい時は素直に市販品を買いましょう。」
スタジオにあるものをフル活用したので、このくらいの値段で済みましたが、
部品全てを買い揃えたり、工具から買い揃えたりしていたら、
もっと高くなってたのは明らかです。

やっぱりというか、当然というか、、
自作には向いていない代物です。

欲しい人は、
素直に市販品を購入することをお勧めします

今回、自作していて分かったんですが、音を閉じ込めるには色々とノウハウが必要です。
ただ単に箱を作ってかぶせてやれば、何とかなると思ったんですが、思った以上に大変でした。
共鳴したり、ビビリ音がでたり、ガワ(ボックス自体)が振動します。

いや〜、ギターアンプやベースアンプで作りだされる音圧ってのはスゴイですよ、、
まず、密閉できるボックスを作ること自体大変なんですが、、
密閉したらしたで、行き場を失った音の圧力がほんの少しの隙間からでも逃げようとして、、
そしたら、その隙間の箇所でビビリ音が発生したり、、。
うまくビビリ音を解決すると、ある音だけ共鳴してしまったり、、。

圧力に負けないだけの重さが必要だったり、吸音が必要だったり、
設計開発者になりきらないと自作はきびしいっすよ、。
(作る人はいないと思いますが、、)

でも、15W位の小さいものだったら案外簡単かも?

予想以上に大変でしたが、予想以上にいいものができました。

よって...


今回自作したサイレントボックス使用します!
今回の実験で、自作したサイレントボックスの性能が実戦でも使用できることが確認できましたので、レコーディングで積極的に使用します。

そうすると、、
今回のレコーディングパターン1のように、ドラム、ベース(ライン)、ギターを一発で録ることが可能になります。
テクニックのあるバンドさんでしたらかなりの時間節約になると思います。

また、今までの一発録り+サイレントボックス使用でツインギターの一発録りも可能になります。
(ただ、モニターの調整に時間がかかりそうですが、、)

更に、ドラムとベースの同時録音でも、ベースアンプが使用できたりと、、
レコーディング方法の種類が増えました。

一発録りのカブリが少なく録音できるようになりましたので、
レコーディングを検討する際には「一発録り」も是非ご検討下さい。

ヘッドを持参の方 (スピーカーは8Ωです。対応しているかお確かめ下さい) 
 Bst常設
マーシャル、ツインリバーブ使用できます
 現在
ジャズコーラスには対応しておりません





ご紹介!

 今回レコーディングで協力して頂いた
 『Little Elephant LABO』 の音源をご紹介!
 
(ご協力ありがとうございました!)
 レコーディングパターン1で録音した曲 → 
お前の街(MP3)
 レコーディングパターン2で録音した曲 → 
台風(MP3)
 是非ご試聴下さい!



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