>目次へ戻る
>TOPへ戻る
【実験1】 割れたシンバルを復活させられないか?(PART1)
シンバル(特にクラッシュシンバル)は使い続けると、割れが発生してサウンドが劣化します。
割れた箇所がシンバルの外周部であれば、その部分を削り取る事で一応はサウンドを復活させる事が可能ですが、
割れ箇所がカップ部の場合は復活不可能と言われています。この場合はシンバルの交換が必要となってしまいます。


<ドラマーの定説>
 ・外周部分が割れた場合はその部分まで外周を削れば一応は復活可能。
 ・カップ部分が割れた場合は復活不可能で、そのシンバルは単なるゴミ。


(外周部分が割れた場合) (カップ部分が割れた場合)
・割れた部分を削り取れば復活できる。 復活不能
とは言っても、シンバルは決して安価では無く、ドラマーにとって購入費用は軽視できません。
しかし、本当にカップ部が割れたシンバルは復活不可能なのでしょうか? 何らかの方法で復活できれば、ドラマーにとって有益なのでは?
そう考え、実験を行う事にしました。

...と、ここまで読んだ皆さんへ、はじめにキッチリ言っておきます。あんまり期待しないで下さい...。

<目標> カップ部分が割れたシンバルのサウンドを何とかして新品に近付ける。
<実験台> 割れたクラッシュシンバル。SABIAN 16"AA MEDIUM CRASH
1.実験台(カップ部割れ)
 ・これが今回の実験台です。 ・カップ部が10cm程割れています。
音を録音して、割れシンバルの音の印象と周波数分布を調べてみます。

・マイクで音を拾ってパソコンに取り込みます。
・シンバルは、常に同一人物が叩くことにします。
・マイクはシンバル真上20cmにセット。
※今回はマイクの特性は周波数分析の考慮に入れません。

はい、録音完了。こんな感じになりました。

・割れ状態のサウンド MP3(50kB)
・割れ状態の周波数分布 360Hz、460Hz、4.2kHz、4.7kHz辺りにピークがあります。

*クリックで拡大表示します。(横軸=周波数、縦軸=音量)
2.新品(他メーカー品)
割れたシンバルの音が分かったところで、新品の音と比べてみましょう!
...と、言いたいところなのですが、実験台と同じ物の新品がありませんでした。他メーカーの16"クラッシュシンバルとの比較でご勘弁下さい。
新品 PAISTE 16" 402 CRASH
・新品のサウンド MP3(50kB)
・新品の周波数分布 500Hz、620Hz、4.2kHz、5.1kHz辺りにピークがあります。
割れたシンバルと比較して
圧倒的に音量が大きいです。

*クリックで拡大表示します。(横軸=周波数、縦軸=音量)

新品/割れた物ではメーカーが違うので一概には比較できないのですが、音を聴き較べると、

 新品:「音が分厚く、鋭く、サステインが長い」
 *サステイン=音の持続時間
 割れ:「音が薄く、サステインが短い」                

...といった印象を受けます。

割れシンバルの方は音に「シャリシャリ感」があるだけで、分厚さ・鋭さが無いと感じるのですがいかがでしょうか?
以後の実験では「分厚さと鋭さがある音」「長いサステイン」の復活をもって実験成功とします。さあ、実験開始です!
3.穴を開けてみる

割れシンバルに穴を開けてみます。
尚、この作業に至った理由に理論的な裏付けは一切ありません。勘です、勘。がむしゃらに作業開始!
・ドリルで穴開け! ・そして、ヤスリで仕上げ! ・あっという間に完成!
・穴開きのサウンド MP3(50kB)
・穴開きの周波数分布 360Hz、460Hzのピークが小さくなってしまいました。

*クリックで拡大表示します。(横軸=周波数、縦軸=音量)
どうでしょう? 音を聴くと、穴開け前より中低音成分が前に出て、音に分厚さが増しました。
しかし、よく聴くと、高音成分がきれいに出ておらず、なんか「グヮングヮン」した響きになっている事に気付きます。
聴いていて爽やかさの無い音です。
サステインも穴開け前と変わってません。

グラフを見ると、
300-500Hzの音量が小さくなっており、高音成分も全体的に小さくなってしまっています。
うーん、一瞬成功かと思ったのですが、これでは不完全でしょう...。 次っ!
4.カットしてみる
次は、シンバルの一部を切り取ってみる事にします。理屈じゃありません。自分の勘を信じるのみ。嫌な予感を感じながらも作業開始!
・先ほどの穴からサンダーでカット!
 勢いで電線まで切りそうです。
・瞬く間に完成! 
 なぁ...切り過ぎじゃないか?これ。
・カットのサウンド MP3(50kB)
・カットの周波数分布 360Hz、460Hzのピークが無くなってしまいました。

*クリックで拡大表示します。(横軸=周波数、縦軸=音量)
嫌な予感的中。最悪です。
音に分厚さも鋭さも無くなって、サステインも極端に短くなってしまいました。なんか、はっきりしないチャイナシンバルの様な音です。
 *参考:チャイナシンバルの音
MP3(50kB)

グラフを見ても、音量が増すどころか300-500Hzの山が無くなっています。これでは通常のクラッシュシンバルとしては、
もはや使い物になりません。大失敗。
ついでに、大胆にカットし過ぎたため、これ以上の細工が不可能! 実験終了で...。
【まとめ】
<サウンドの比較>
新品 割れ 穴あけ カット




・音に分厚さと鋭さがある。
・サステインが長い。
・音に分厚さがない。
・サスティンがかなり短い。
・音に分厚さが増した?
・高音が目立たなくなった。
・チャイナシンバルみたいな音に。
・サステインが非常に短い。
<実験結果>  大失敗
<分かった事> ・割れたシンバルに穴を開けても、カットしてもサウンドは復活しない。
・穴開けすると、高音が引っ込む。
・カットすると、サステインが極端に短くなる。
・シンバルの質量を減らすほど、元の音のキャラクターが失われていく。
・勘に頼るな。

...と、非常に情けない結果となってしまいました。しかし、このままでは終われませんので、必ず再チャレンジします。
 >>割れたシンバルを復活させられないか?(PART2)

【2012年12月追記】
現在、割れたシンバルはリサイクル業者に引取って頂いています。処分にお困りの割れシンバルがありましたら無料で引取りますので、スタジオにお持ち下さい。
▲ページの先頭へ


>目次へ戻る